第27回映画祭TAMA CINEMA FORUM
映画祭最終日を迎えた朝、寒空のもと会場には開場を待つ長蛇の列が出来ていました。
第9回TAMA映画賞最優秀新進男優賞を受賞した高杉真宙さんの特集として、2014年公開の出演作『ぼんとリンちゃん』、今年公開された主演作『逆光の頃』を上映し、トークには高杉真宙さん、上映作の小林啓一監督、映画評論家のくれい響さんがご登壇されました。リラックスした雰囲気のなか自然体でお話しされていました。
小林監督の念願であった『逆光の頃』の映画化。監督は高杉さんに初めて会ったときから孝豊役にいいな、と思っていたそうです。そのことに高杉さんは「監督が初めて会った当時にそう思ってくれていて、その『逆光の頃』が実現できたことが幸せだなぁと思います」と喜びを語られました。
また、くれいさんから小林監督の持つ厳しさや撮影に関して質問された高杉さんは、小林監督との撮影は「壁」ばかり、でもひとつのシーンを何度も撮ることでいろいろな挑戦もでき、いい意味でしつこく撮影した経験が自身の血肉となって活きています、と撮影時を振り返っていました。
高杉さんが演じられた役柄について、小林監督は「『ぼんとリンちゃん』や『逆光の頃』で高杉さんが演じたような受けの演技は簡単そうに見えて難しい。『逆光の頃』の孝豊のように受けの演技を主役としてやることは、周りに合わせつつ、自分を失わないで周りの人と対峙している時にちょっとずつ色んな顔を見せたりする。真宙くんは友好関係をセリフではなくお芝居で見せていくことをナチュラルに演じている。孝豊は受けの演技だけれど物語を表現しなければいけない難解な役だった」と高杉さんの難しい役柄でも繊細に演じられたことに太鼓判を押していました。
お客様からの質問を受け付けるQ&Aではたくさんの手が挙がりました。「『ぼんとリンちゃん』をいま撮るならどう撮るのか、演じるのか」という質問に、監督も高杉さんもワンシーンワンカットの手法を含め当時とそこまで変わらないかも、とのお答えでしたが、高杉さんは「ぼんちゃんやみゆちゃんの言っていることが自分の考え方とともに変わってくる。だからそういうものは演技に影響してくるかもしれないです」とお話しされていました。
最後に小林監督は、黒澤明と三船敏郎のように高杉さんとコンビになりたいと熱望。高杉さんは「いつでも高杉真宙として小林監督に撮って頂きたいなとすごく思います」と答えられ、ますます再びのタッグに期待が高まりました。
トークを通して高杉さんと小林監督のいい映画を作るために妥協しない姿勢と、ともに慕いあう関係性がとても伝わってきました。トーク中には小林監督が高杉さんを「まひろっち」と呼ぶなどの仲の良さに客席から笑い声があがり、会場は終始温かな空気に包まれ、大盛況のなかプログラムは終了いたしました。
高杉さん、小林監督、くれいさん、お越しいただいたお客様、誠にありがとうございました。