第26回映画祭TAMA CINEMA FORUM
珍しく雨天の開幕となった映画祭初日。パルテノン多摩開場の9時、外に並んでいたお客様にエントランスホールに入っていただきましたが、それでも後から後からお客様が見えて、傘の列が中央公園まで伸びでいくのは申し訳なく思いました。
2作品の上映が終わり、授賞式が始まる頃にはすべての席が埋まりました。ピンと張り詰めた空気のなかで最優秀新進監督賞から授賞式がスタート。小泉徳宏監督が「『ちはやふる』はスポ根映画として撮りたかった」とおっしゃった後、前田司郎監督がトロフィーを片手に「こんな置物が家に欲しかったんです。意外と軽いですね。」とお客さんをなごませてくださり、場内がアットホームな雰囲気に包まれていきました。
最優秀新進女優賞では、小松菜奈さんが「重く暗い役がやはりすごく楽しくて、救いようがない役をやっていけたら」と女優としての意気込みを語れば、松岡茉優さんは「同世代の俳優陣の層が厚いので、若手女優陣、男優陣で映画界を盛り上げていきたい」と映画界を見据えた意気込みを語ってくださいました。
最優秀新進男優賞では、村上虹郎さんは松山市でオールロケを行った『ディストラクション・ベイビーズ』で伊予弁を覚えるのに苦労したエピソードを述懐すれば、若葉竜也さんは「(『葛城事件』で兄役の)新井浩文さんに『新人賞を取りたい』って言ったら『無理だよ』と言われました。新井さん、やりました!」と誇らしげに語ってくださいました。
特別賞は、『ディストラクション・ベイビーズ』で受賞した真利子哲也監督が「今作は暴力をテーマにしたので、次は穏やかな作品を」と語れば、柳楽優弥さんは「ラブコメに出ていきたいです。そういうイメージを作り上げていけたら。」と語り、意表をついたコメントに会場が沸きました。一方、『ジョギング渡り鳥』で特別賞を受賞した鈴木卓爾監督がビデオメッセージで「『ジョギング渡り鳥』は……どんな映画だろう。」とマイペースなコメントで笑いを誘った後、スタッフ兼キャストの13名が本作での役割を語り、その手作り感が会場のお客様の共感を呼んでいました。
最優秀女優賞では、蒼井優さんが「会場もバックヤードも本当にあったかい映画祭」とおっしゃってくださり、小泉今日子さんは「映画祭のパンフレットを隅から隅まで読んで、本当に映画が好きな人たちが自分たちの手で作っている映画祭だということがよく分かりました。みなさんが映画祭に通って、映画を観る人たちがたくさん育ってくれるといいと思います」とねぎらいのコメントをくださって、実行委員冥利に尽きました。
最優秀男優賞では、まずオダギリジョーさんが「11月19日という、あの有名な松崎しげるさんが誕生した記念すべき日に」と、ぼけると、三浦友和さんが「11月19日は……」と、いったん間をあけた後に「偶然にも私たちの結婚記念日です」とおっしゃって、満席の会場から拍手喝さいを浴びました。
おおとりの最優秀作品賞では、『団地』の阪本順治監督が「(作風の)根っこには思春期の好むものや許せないものがある。時代に合わせて撮れないタイプですが、これからは以前とは違うものをやりたい」と今後の抱負を述べられました。最後に『オーバー・フェンス』の山下敦弘監督は「この作品は全員野球が合言葉。スタッフひとりひとりのアイデアが組み込まれ、力以上のものができるという貴重な現場でした」と明かし、壇上のオダギリジョーさん、蒼井優さんと喜びを分かち合いました。
2時間を超える授賞式でしたが、ご登壇者の誠意とお客様の醸し出す温かい会場の雰囲気で今年もいいセレモニーになりました。これを継続していけるよう映画祭運営を頑張っていきたいと思います。