第28回映画祭TAMA CINEMA FORUM
昭和10年代、備前岡山から会津若松に移り住んだ暴れ者の硬派学生が、喧嘩に明け暮れながらも成長してゆく様を活写した、おおらかな青春映画。若き高橋英樹が主人公を熱演。
軍国化した日本が戦争へと突き進んでいくなか、市井の若者たちが有り余る熱情を喧嘩に恋にこけつ転びつしながらも進んでいく。監督の鈴木清順は、日活時代に低予算かつ短い撮影期間による娯楽作品の量産体制、いわゆる「プログラム・ピクチャー」のなかで独特のシャープな作風を完成させている。今作品ではめくるめく色彩を散りばめた清順カラーを封印し、モノクロームの画面の中にほとばしる生の躍動を存分に煌めかせている。
主人公麒六(高橋)、麒六が慕う道子(浅野)、喧嘩の師匠すっぽん(川津)、麒六の父、会津の校長などが、軍靴の音が響くなかで前を見据えながら生きていく。2.26事件で処刑される国家社会主義者・北一輝の登場は原作にない設定で、清順監督が発案したものだというが、ラストシーンの意味は、監督の時代への重いメッセージがこもっていると思います。(竹)
月光仮面の川内康範が原作・脚本、鈴木清順が監督、渡哲也が主人公「不死鳥の哲」を演じ、松原智恵子、二谷英明、川地民夫、郷鍈治が花を添える。渡哲也はデビュー2年目であったが、すでに映画スターとして輝いている。
不死鳥の哲は、所属していた倉田組がヤクザ稼業から不動産業に変わったと同時に足を洗い、恋人の千春と結婚する決心をしていた。倉田は経営が厳しいため、金融業の吉井からビルを担保に金を借りていた。哲は倉田の代わりに吉井に会って手形の延期を申し込むが、吉井は倉田組と敵対する大塚組からビルの権利書を奪われ、殺されてしまう。
日活の王道ストーリーと鈴木清順の作家性が奇跡的にバランスよくミックスされた作品と言っていいが、清順監督作品を初めて観る人にとっては奇妙に映るかもしれない。もともと無国籍映画と言われた舞台を使って清順監督が縦横無尽に映画を遊ぶ。鈴木清順はこの作品の後、『けんかえれじい』を挟んで、問題作となった大傑作『殺しの烙印』(1967年)を放つ。(石)