第28回映画祭TAMA CINEMA FORUM
舞台は台湾中西部の町、彰化(しょうか)。退屈に思える高校生活を、くだらない悪戯でにぎやかし、個性ゆたかな仲間たちと学業そっちのけで過ごしていた男子生徒のコートン(K・チェンドン)。ある日、その悪ふざけも度が過ぎて、成績優秀な女子生徒・チアイー(M・チェン)の前に席替えさせられる。お互い最初はぶつかったが、仲間たちも憧れるチアイーとの学業の特訓を通して、二人の距離は縮まっていく……。
本作に登場する仲間たちの奔放さに触れていると、自分の青春はどうだっただろうかと胸に手をあてるような感覚に陥る。きっと、誰もが抱いたであろう、その年代特有の危うさ。「青春は恥と後悔と初恋で作られる」とは、よく言ったものだ。自信はあるのに一歩が踏み出せなく、思考の範囲は広いようで中身はかなり抽象的。ひとたび想像と妄想の連鎖のなかに迷い込むと、世のなかの公理まで疑いはじめてしまう。そして、その反動はさまざまなかたちで表出するのだ。そんな不器用さがあった。
一方で、高校を卒業した後でもチアイーとの関係を先へ進めなかったコートンの“幼稚さ”は、まっすぐで純粋な想いの証明ともいえ、清々しさを感じさせた。
人生の選択は多岐にわたる。あっという間にたくさんの選択をくだしていく学生時代の尊さを振り返っている自分がいた。自分はその頃、何を追いかけていただろうか、と。(渉)
モン(G・ルンメイ)とリン(L・シューホイ)は、何でも話せる親友同士。リンは、水泳部のチャン(C・ボーリン)に片想いをしているが、告白する勇気が出ない。リンに頼まれ、モンはチャンにリンのラブレターを渡す。しかし、そこからチャンはモンに好意を寄せて、アプローチを始めた。モンはやがて心を開き、チャンに秘密を告白する。
2002年カンヌ国際映画祭に出品された作品で、イー・ツーイェン監督の2作目、そして最も有名な作品。
「青春」は、いつでも映画の重要なテーマの一つで、これまで色々な映画で、色々な青春が描かれてきた。残酷な青春、情熱的な青春、そしてこの作品が描く爽やかな、誰しも経験したことがあるような甘酸っぱい青春。映画の構造は至って簡単、たった3人の高校生のひと夏の出来事。勝気なモン、まっすぐなチャン、そしてちょっとジコチューなリン。1人の恋心をきっかけに、3人の関係に微妙な変化が起こり、その微妙な変化にしたがって物語は進む。やがて夏が終わり、それぞれの恋は、それぞれの結末をむかえる。映画の最後、街中で笑顔を浮かべながら自転車を漕ぐモンとチャンは、まさに青春そのもの。
余談だが、今作の邦題は『藍色夏恋』だが、中国語の原題では『藍色大門』だった。17歳の主人公たちは、その青い青春の門をくぐり抜けたら、どんな大人になるでしょうか。(陳)
移動映画館「キノ・イグルー」代表。2003年に級友とともに移動映画館を設立。企画のコンセプトやその場所の空気に応じて、上映する映画をチョイスし、東京を拠点に全国のカフェ、パン屋、酒蔵、美術館、無人島などで、世界各国の映画を上映している。さらに「あなたのために映画をえらびます。」という映画カウンセリングや、毎朝インスタグラムに思いついた映画を投稿する「ねおきシネマ」など、大胆かつ自由な発想で映画の楽しさを伝えている。