第28回映画祭TAMA CINEMA FORUM
太平洋戦争末期の北支戦線を舞台に、佐藤允扮する元軍曹が軍隊のはみ出し者を集めた独立愚連隊に潜入し、慰安婦と心中したとされる弟の死を探るという物語である。
この映画は西部劇の活劇調で、わずかな出演だが、三船敏郎演ずる大隊長、鶴田浩二演ずる無国籍な感じの馬賊もキャラが立っている。主人公の佐藤允や愚連隊の面々や慰安婦たちが、生き生きと人間臭く描かれている。当時の映画評は岡本監督の思惑とは正反対のもの。「戦争ハニンゲン・イコール・ムシケラニスル、ダカラ戦争ハイヤナンダ」というつもりで作ったのに、「俄然好戦的な大量殺人者メ」というハンコを押されて返ってきた……そうである。 「開戦の日、17歳だった僕自身の寿命をつかみで21歳と踏んで、最後の兵士としての8ヶ月は栄養失調と特攻訓練と死への恐怖との闘いだった。そしてあらゆる状況を喜劇的に見る癖をつけちまおう」という思いを抱いた経験が、岡本喜八映画の始まりのようだ。
また、庵野秀明監督は岡本監督の大ファンであり、『シン・ゴジラ』でもはみ出し者を集めた形になっていて、岡本監督が牧教授の像(?)として出演している。(綾)
「かくして日本には、そのいちばん長い日がやってきた」
太平洋戦争の終戦から73年を迎えた今日。ポツダム宣言受諾決定から、全国民へ向けた玉音放送までの一日に何があったのか。半藤一利のノンフィクション(編・大宅壮一)を原作に、岡本喜八監督がつくり上げた大作を観る。
三船敏郎演じる陸軍大臣阿南惟幾大将を中心に、笠智衆演じる鈴木貫太郎首相、下村情報局総裁に志村喬、迫水書記官に加藤武、ナレーションは仲代達矢、物語の肝になる宮城事件の陸軍青年将校に高橋悦史、黒沢年男など、豪華俳優陣が揃った。
公開は1967年で、終戦より22年という時期。あの大戦、あの時代の空気を知っている人たちがまだ多く残るなかで作られた作品は、ひとり一人の俳優の臨場感、緊迫感、そして眼光の鋭さが違う。
それぞれがそれぞれの立場で、日本人としてあの戦争はなんだったのか、どう終わらせるべきだったのか。それは単純に戦争賛美もしくは戦争批判の映画ではなく、日本人が日本人として国を想うことに想いを馳せた作品だったように思う。(青)