第31回映画祭TAMA CINEMA FORUM
写真家を目指すアコとフリーターのサンは、共通の友人とともに共同生活を始めたものの、事情により友人が家を出た今やむを得ず二人暮らしをしている。アコは几帳面でストイック、サンはだらしなく自由気まま。正反対な二人の生活は微妙な空気に包まれている。
噛み合わないながらも共に暮らす二人と、それを取り巻くちょっと変わった人々との日々を描いた4章構成のオムニバス作品。
俳優として、演じることを起点にして映画のことを知りたいという気持ちで作品創りを行っています。オムニバスで章ごとに違うテーマで撮ることに挑戦し、俳優仲間と作りました。他人のことを、受け入れたり、受け流したり、理解に苦しんだり、敬ったりする日々の移り変わりを思い、映画を通して考え、そして示すことが出来るようになりたいです。
1989年生まれ、愛知県出身。振付師・俳優。幼少期よりダンスを始め、中学生でミュージカルを経験。舞台製作・振付・出演などを経て、2017年映画美学校アクターズコースに通い、映画製作に興味を持つ。初監督作『泥濘む』がPFF2019入選。今作品が初長編作品。http://www.sakicato.com
東京に生きる恋人、マアサとカイ。地元の友人アキとの再会を楽しんだ二人は、いずれ結婚するであろう彼と、自分たちの未来に思いをはせる。撃ち合いごっこをしながら駆け抜けていく夜の街。消えてしまった彼らの犬の墓。カイの知らないうちに、マアサは他の誰かと寝て、ダンスを覚える。不器用な愛をぶつけるカイと、それでも孤独を感じてしまうマアサ。二人の、そしてそれぞれの時間が過ぎる。そんなある時、突然アキが失踪したと連絡が届く。
今だからこそ、人間の愚かさと、しかし絶対に無視することのできない愛らしさを、敢えて愚直に恋愛と身体の躍動を通して描きたいと思いました。この作品が、自由とは程遠い今ここに在る私たちと、世界との距離を見つめ直す糸口となることを願っています。
1997年生まれ、東京都出身。東京大学教養学部表象文化論コース卒業。2016年東京大学入学後、映画制作スピカ1895に参加し、主に監督を中心に映像制作を行う。首都圏映画サークル連合にも所属。大学卒業後同サークル連合出身者や映像業界勤務者と有志で映画制作を継続。監督作『さよなら魔法少女』は渋谷TANPEN映画祭にて上映。
派遣社員として働く晴海は人と話すときに「変顔」をしてしまうという癖のせいで仕事をクビになる。ある日、晴海が妹の家に行くと、最近向かいに引っ越してきたという家族が挨拶にやってくる。その家族の母親が娘の家庭教師を探していると聞いた晴海は、自分も家庭教師だと嘘をつき、勉強を教え始める。しかし、彼女にはある変わった癖があり……。2人はお互いの癖に困惑しつつ、互いに心を通わせていく――。
私たちは、世の中には記号的なものが多すぎると日々感じています。言葉は時に人の救いにもなりますが、現代人は言葉に生かされ過ぎているとも思います。うつ病や発達障害など明確に言葉にするまで、人は無意識に感情を抑えることが多いのではないでしょうか。でも本来は言葉に頼る前に、辛いと感じたことにはちゃんと辛いと感じるべきだと考えます。この映画が、誰かの痛みを肯定できる作品になれば幸いです。
1995年生まれ、愛知県出身。高校時代の4年間をアメリカ、ペンシルベニア州で過ごす。帰国後、早稲田大学に入学し映画制作を始める。大学2年時に脚本・主演を務めた映画『さんさんごご』が2015年度の沖縄国際映画祭U-25部門にてグランプリと観客賞を受賞。翌年、映画祭の出資を受け、映画『花はだいだい』を製作、沖縄国際映画祭に正式招待。フロリダ州立大学での映画留学を経て、現在はフリーの映像ディレクターとして活動中。
とら男は、ある事件のことが忘れられないまま孤独に暮らしている元刑事。事件とは、30年以上の刑事人生で、とら男が唯一未解決にしてしまった地元の女性スイミングコーチ殺人事件だった。そんなある日、とら男は、東京から植物調査に来た女子大生かや子と偶然出会う。とら男の話に興味を持ち、事件を調べ始めるかや子。時効になり、誰からも忘れられた事件はゆっくりと動き出していく。
小さい頃に野球をやっていた公園の敷地内で若い女性の遺体が発見されました。1992年のことです。自分の人生で初めて身近に起こった殺人事件であり、目撃情報を求める立て看板や噂話など、当時のことは鮮明に覚えています。時効になった未解決事件ですが、その事件を、当時担当していた本物の刑事主演で描く意味はあると思いますし、この映画で何かが変われば良いなと思っています。
1982年生まれ、石川県出身。2002年ニューヨーク市立大学在学中に短編映画から映像制作を始める。04年帰国後、CM制作会社を経て、08年よりCM・MVを中心に映像ディレクターとして活動をスタート。17年、映画『堕ちる』が、32分の短編映画ながら映画館で単独上映されるなど、国内外で話題を呼ぶ。21年、実在の未解決事件をモチーフとした初の長編映画『とら男』が完成。
美術部に所属する高校生の朔子は、漁港で船のスケッチをしている最中に誤って海に転落。それを見ていた同じ美術部女子部員の西原が、「溺れる朔子の絵」を描いてコンクールで受賞。絵は学校に飾られるハメに。笑い者にされた朔子は、「船」をモチーフとした造形物の創作に打ち込むが、失敗。そんなある日、朔子は西原から新作の絵のモデルを頼まれる。しかし、西原のある噂を耳にして……。
人間嫌いだった私は、映画が好きになり人と関わりたいと思い、多くの方の手をお借りしながら、気付けば人と関わる喜びを物語る映画を撮っていました。撮りながらコロナ禍を経験し、変化が多々あるなかで、人と関わりたい、映画が好きだという気持ちは強固になるばかりでした。本作は見る/見られるの関係性を描いた作品でもあります。ご覧いただくことで繋がりを持てるなら何よりも嬉しいです。
1987年生まれ。広島県出身。関西大学・立教大学大学院で映画理論・映画制作を学ぶ。卒業後は映画やCM、TVドラマの現場に携わる。初監督短編『怪獣失格』(2008年)がCiNEDRIVE2009で上映。その他監督作品に『分裂』(12年)、『アイム・ヒア』(19年)、『躍りだすからだ』(20年)などがある。初の長編映画となる『ミューズは溺れない』は、19年に撮影を開始し、コロナ禍での一時中断を経て、2年がかりで完成した。
1978年生まれ、鹿児島県出身。独学で映画を作り始め、短編映画『女』『鵜野』(いずれも2005年)がひろしま映像展2005でグランプリ&演技賞をW受賞。『古奈子は男選びが悪い』(06年)が第10回水戸短編映像祭でグランプリを受賞。11年、長編映画デビュー作『婚前特急』で、第3回TAMA映画賞最優秀新進監督賞、第33回ヨコハマ映画祭新人監督賞、第21回日本映画プロフェッショナル大賞新人監督賞を受賞。主な監督作に『太陽は待ってくれない』(12年)、『わたしのハワイの歩きかた』(14年)、『夫婦フーフー日記』(15年)、『セーラー服と機関銃 -卒業-』(16年)、『まともじゃないのは君も一緒』(21年)など。
1971年生まれ、和歌山県出身。映画評論家、ライター。著書に「シネマ・ガレージ~廃墟のなかの子供たち~」(フィルムアート社)、編著に「21世紀/シネマX」「日本発 映画ゼロ世代」(フィルムアート社)「ゼロ年代+の映画」(河出書房新社)ほか。「週刊文春」「朝日新聞」「キネマ旬報」「映画秘宝」「メンズノンノ」「シネマトゥデイ」などで定期的に執筆中。YouTubeチャンネル「活弁シネマ倶楽部」ではMC担当。