第31回映画祭TAMA CINEMA FORUM
デイヴィッド・バーンが2018年に発表したアルバム「アメリカン・ユートピア」を原案としたブロードウェイショーを、スパイク・リーがライヴ映画化。ミュージシャンは全員裸足でグレースーツに身を包んでいる。楽器はすべてコードレスでミュージシャンたちは自在に舞台上を動き、踊りながら演奏する。
スパイク・リー監督だから、という理由でデイヴィッド・バーンやトーキング・ヘッズの楽曲はまったく知らないで本作を観に行った。ラジオの映画評やレビューアプリを見ると同様の観客も多かったようだ。
冒頭のデイヴィッド・バーンの語りに始まり、これはどう楽しめばいいだろうかという戸惑いを抱いた。曲が始まり、歌詞を追いながら意味を咀嚼しようとする。しかし、どうにも抽象的な言葉たちは頭に入ってこない。そのうちにミュージシャンが増え、楽器を携えたまま縦横無尽に舞台で踊り、演奏し、歌う姿に目を奪われるようになっていった。一体感がありながら自由で時にユーモラスだ。
そのうちに歌詞を深く追わずに、舞台で繰り広げられるパフォーマンスに高揚していた。さまざまな出自を持つミュージシャンたちが一つの舞台で音を鳴らすこと自体が大きなメッセージとして、言葉以上に意味を持って私たちに呼びかけてくる。ぜひ劇場で多くの人に受け取ってほしい。(緋)
1952年生まれ、スコットランド出身。大学の仲間とトーキング・ヘッズを結成し77年にアルバムデビュー。革新的な楽曲で注目を集めたが、91年に解散。81年よりソロ活動を開始し、共作も含め精力的に活動。また『ラストエンペラー』(87年)で坂本龍一らと共にアカデミー賞作曲賞を受賞。その後も数々の映画へ音楽を提供する。その他『デヴィッド・バーンのトゥルー・ストーリー』(86年)などの監督、エッセイなどマルチに活躍。