第29回映画祭TAMA CINEMA FORUM
中央大学多摩キャンパスは好天に恵まれ、深緑の多摩丘陵を背景にお客様の列が連なっていました。クレセントホールは半月のように客席が舞台を囲み、ゲストとお客様の距離がより近く感じられるなか授賞式がスタート。
最優秀新進監督賞では、『僕はイエス様が嫌い』の奥山大史監督が「ヨーロッパの映画祭で上映したときに、日本人なのにどうして我々のイエス様への思いがわかるのかと言われました」と作品を語り、『ホットギミック ガールミーツボーイ』、『21世紀の女の子』で受賞された山戸結希監督は「実行委員の女性の方が泣きながら感想を伝えてくださり、世界の見え方が変わる受賞になった」と真摯に語られました。
最優秀新進女優賞では、シム・ウンギョンさんが「本来一度しかない新進の賞を、日本で再び頂けることになって心が温かくなった」と感謝の言葉を述べられ、岸井ゆきのさんは「表参道で1日に3回も『愛がなんだ』を観ましたと声をかけられて、ヒットしているのかな」と実感を語られました。
最優秀新進男優賞では、清水尋也さんが「二十歳になった節目の年に初めての映画賞を受賞できて嬉しい」と述べられた後、山戸監督から「清水さんは天才なので、清水さんにしか出来ない役を突き進んで欲しい」と言われて、「大勢の前で天才と言われて気持ちが引き締まりました。これからもより一層頑張ります。」と意気込みを語られました。成田凌さんは「映画界に欠かせない人間になれるようにこれからも精進していきたい」と決意を語られました。ここで『愛がなんだ』の今泉力哉監督がサプライズで登壇されて岸井さん、成田さんを祝福され、役作りのために距離を取ろうとしていた岸井さんの配慮に気づいていなかった点で、成田さんは役のマモルに相通じるところがあると客席の笑いを誘っていました。
特別賞では、『新聞記者』の河村光庸プロデューサーが「藤井道人監督から『この映画は公開できるのですか?』と聞かれて、『やるよ!』と返しましたが、そのとおりできました」と率直に語られ、『天気の子』の制作を担当された伊藤絹恵さんは「1,000人くらいのスタッフで創り上げた作品が数多くのお客様に届いたことを嬉しく思う」と喜びを語られました。また、新海誠監督が中央大学の出身とのことで、プレゼンターを務めた福原学長から新海誠監督に対するお祝いのメッセージが寄せられました。
最優秀女優賞では、前田敦子さんが「今年は一番映画に参加させていただけた年。また映画の世界にがっつり携われるよう、ひたむきにやっていきたい」と抱負を語られ、蒼井優さんは「新しい一歩を踏み出す時期に受賞できてとても光栄ですし、叱咤激励だと思って真面目に映画作りに取り組んでいきます。皆さんもどうか映画を信じてください」と語りかけてくださりました。
最優秀男優賞では、井浦新さんが「生まれ育った地元で中央大学を横目で見ながら高校に通っていたので、TAMA映画賞をここでいただけたことは感慨深いです」と感謝の念を述べられていました。
最優秀作品賞では『長いお別れ』の中野量太監督が「20年前に卒業制作で初めて撮った映画を唯一評価してくれたこの映画祭はずっと僕のこと見ていてくれて、また作品賞を頂きました。今後も見ていていただきたい」と謝意を述べられました。『嵐電』では鈴木卓爾監督とスタッフ・キャスト12名がご登壇され、ひとり一人作品への思いと抱負を語ってくださり、最後に井浦新さんが「ここにいる若手俳優たちはいずれ成田凌君たちを突き上げていく存在になるので覚えていてください」と締めくくられました。
2時間半を超える授賞式になりましたが、ご登壇者の誠意とお客様の醸し出す温かい雰囲気によっていいセレモニーになりました。