第29回映画祭TAMA CINEMA FORUM
今回の映画祭で3回目になる団地団による団地映画のフィルム上映とスペシャルトーク。今回も増々の盛り上がりを見せました。『家族ゲーム』、『下町の太陽』と続く団地映画上映。今回はずばり『団地七つの大罪』。昭和30年代のサラリーマン憧れの大型団地を舞台に、6組の夫婦の事情と、隣人との事情と思惑を「虚栄の罪」「覗きの罪」「己が罪」「やりくりの罪」「過淫の罪」「嫉妬の罪」「文明の罪」の七つの罪から描くオムニバス喜劇。原作はあの怪物、竹中労のルポルタージュ。演ずるは宝塚映画を代表する東宝大スター達の若かりし畏れを知らぬファンキーな演技陣。加えて、上映フィルムが東宝倉庫に眠っていた貴重なフィルム。その劣化具合がなんともな味わいを醸す二度と観られないフィルムの上映でした。
もはや映画祭名物となる団地団の面々によるトークを楽しみに、年々固定ファンが増えていく会場で、夕焼け色のフィルム上映が開始。スクリーンに繰り広げられる軽妙な人間模様にグイグイ引き込まれていく。往年の大スター達の繰り広げる昭和30年代のコンプライアンス完無視のストーリーに観客もあ然としながらもラストまで一気に魅せられていく。
さて上映終了後、お待ちかねの団地団トーク。今回はライターの速水健朗氏が二部からの参加のため、5名によるトーク。まず脚本家、佐藤大氏による何故この女優陣なのかの謎解きと、フォトグラファー、大山顕氏によるお得意の緻密な裏付けによるこの映画の団地の解体と分析。ライター、稲田豊史氏による竹中労の原作と映画との比較。漫画家、妹尾朝子氏によるストーリーの多面的な解説。そして昭和30年代のジェンダーの限界を作家、山内マリコ氏が鋭く解析していく。まさに縦横無尽なトークの嵐が進んでいく。予定時間の50分はあっという間に過ぎ、第一部終了。
1時間半の休憩を挟んで恒例の二部。無制限マシンガントークが会場を移して始まった。昨年、一昨年と団地団ファンになった観客が今回は会場のイスを全部セットしても足りないくらいに集まり、腹ごしらえを終えた団地団のフルメンバーによるパワーアップしたトークが開始。いきなり稲田氏による、キネマ旬報社を舞台にした、「竹中労とキネマ旬報事件」で始まり、一部トークで浮かび上がった「田嶋陽子再評価」、「高根台団地の住人話」、「あいちトリエンナーレからのアート問題」、「オリンピック」、「デス・ストランディング」「熊本テクノ団地」と、瞬く間に団地団の渦に巻き込まれていく。4時間半を越える頃、主催者泣く泣くストップサイン。まだまだ山盛りのテーマを残し、盛況のうちに今年の団地団ワールドは無事終了。固定ファンを増やし、更なるバージョンアップを確信させられた素晴らしい一日でした。