第32回映画祭TAMA CINEMA FORUM
TAMA映画賞授賞式として、4年ぶりに戻ってきたパルテノン多摩大ホール。ホールの内装も一新され、胸章、Tシャツ、トートバッグなど映画祭オリジナルグッズを販売する物販コーナーに長蛇の列ができ、華やかに彩られた会場がにぎわいました。それも授賞式開始前の予鈴がなると、その波もさーっと収まり、ホール内はワクワク感と緊張感に包まれていざ開幕。
トップバッターは最優秀新進男優賞の横浜流星さん。受賞作『流浪の月』について、「更紗(広瀬すずさん)と文(松坂桃李さん)に影響を与えないといけないし、観ている方にも嫌悪感を与えないといけない役でとても挑戦的だったんですが、撮影中は悩みながらも監督を信じてなんとか乗り越えられた気がします」と語り、更に「来年、7年のお付き合いになる藤井道人監督の『ヴィレッジ』と『春に散る』(瀬々敬久監督)の公開が控えていて、いずれも挑戦的な作品なのでたくさんの方に届けばいいなと思っています」と今後を見据えていらっしゃいました。お忙しいなか時間を作ってご登壇いただき、受賞コメントを述べられた後、すぐにまた撮影現場へと向かわれました。
お二人目の磯村勇斗さんは授賞式直前に体調を崩され、受賞作『ビリーバーズ』の久保和明プロデューサーが代理でご登壇され、「磯村さんはこの受賞を『ビリーバーズ』に関わったみんなで獲った賞だと喜んでいました」と代弁してくださりました。
最優秀新進監督賞では、『こちらあみ子』で受賞された森井勇佑監督は、「自分のなかの<あみ子像>を主演の大沢一菜が超えてきたところがあったので、それをできるだけ削がないように大沢さんの魅力をそのまま伝えられるように思いながら撮影しました」と、あみ子を演じた大沢一菜さんを称賛されていました。
『さがす』で受賞された片山慎三監督は、「高校生の時に父親が阪急電車の中で指名手配犯を見たという話を始め、その犯人が捕まって足取りを調べたら本当にその電車に乗っていたことがわかり、それが本作の着想につながった」と、作品創作の経緯を語ってくださりました。
最優秀新進女優賞の伊東蒼さんは、大阪の出身。受賞作『さがす』について、「ここまで長く関西弁でお芝居をしたのは初めて。台本を読んだときから楓ちゃんを身近に感じることが出来て、大阪の街並みで撮影出来たのはすごく楽しかったです」と、撮影当時の様子を話してくださりました。
河合優実さんは「『PLAN 75』で倍賞さんにいただいた言葉を思い出しています。私がオールアップする時に倍賞さんが「頑張っていれば、誰かが見てくれているからね」と言ってハグしてお別れしてくださって、映画祭で賞をいただくこということは目の前にあることを楽しんでまっすぐ取り組んだ結果、皆さんの思いがこういう賞という形で私のもとに届くのかなと思います」と感謝の言葉を述べられました。
特別賞では、『恋は光』の小林啓一監督は、SNSなどで本作を支持した方々による通称“チーム恋は光”の影響について質問されて、「ご覧になった方の反応がすぐに反映されるようになった。ちゃんと物を作っていけば(観客の方が)応えてくれるとわかったので、本当に一生懸命作って良かったなと思っています」と、にこやかに答えられました。
『メタモルフォーゼの縁側』では、宮本信子さんと狩山監督が受賞コメントを述べられたところで、サプライズで芦田愛菜さんから宮本さん、狩山監督にお祝いを伝えるビデオメッセージが投影されました。宮本さんは、「以前(『阪急電車』)は、祖母と孫という役柄で、私が幼い芦田さんの手を引いて歩いていましたが、10年経ち本当に素敵な女性になられていました。うららさん役が芦田さんで本当によかったなと思います。歳の差はありますがプロ同士なので、初日に一生懸命頑張りましょうと言い合いました」と、芦田さんを称賛されていました。
最優秀男優賞では、松坂桃李さんが「舞台袖で佐藤二朗さんが「俺がしゃべりやすいように場を柔らかくしろ」と言われて、しゃべることを考えていたんですけど、今何をしゃべっていいか分からなくなってしまいました(笑)」と話されると、舞台袖から佐藤さんが「バラすなよ、桃李!」と叫んで、会場が一気になごみました。「チャップリンは「あなたのベストアクトは何ですか?」という質問に対して「NEXT ONE」。僕のベストは常に次だと答えています。まだまだチャップリンには遠く及ばないのですが、『流浪の月』は間違いなく僕のなかでのベストだと思っています」と述べて、客席から大きな拍手を浴びました。
佐藤二朗さんは「31歳から映像の世界に入って今年で22年目ですが、俳優として唯一もらった賞は<NG大賞>です。今回はじめて褒められた感じがします。よくバイプレーヤーと言いますが、そういった俳優がこういう賞をいただくということは、たくさんの俳優、もしかするとたくさんの見ている方、そして言うに及ばず、僕自身の励みになります。……今日、11月26日。<いい二朗の日>」と言うと、割れんばかりの拍手が巻き起こりました。アクリル板の間に入っての片山慎三監督、伊東蒼さんとのトークでは、娘役の伊東さんに優しいお父さんぶり(?)を発揮されていました。
最優秀女優賞では、広瀬すずさんが、「自分のなかでは凄い苦しい撮影だったのですが、今こうして、『流浪の月』という作品が多くの方に届いていたんだなと思うし、本当に踏ん張って良かったと思っています」と喜びを語られました。その後、共演された松坂桃李さんと並んで、李相日監督の張りつめた緊張感のある撮影現場のお話になり、お互いに支えあった信頼関係が垣間見えるトークになりました。
倍賞千恵子さんは、「トロフィーが大好きな黄色で結構重たいです。こんなにたくさんの方の前で、こんな立派な賞をいただいて、本当に舞台袖でドキドキしながら待っておりました。『PLAN 75』という映画で素晴らしいスタッフの皆様と一緒に『PLAN 75』という山を登れたことを、本当に光栄に思っております」と喜びを語られました。祝福に駆け付けた『PLAN 75』の早川千絵監督、共演された河合優実さんとのトークでは、早川監督、河合さんの倍賞さんに対するリスペクトの大きさが手に取るようにわかり、心温まるトークとなりました。
最後の受賞は最優秀作品賞。『ハケンアニメ!』の吉野耕平監督は、「この作品はエンドロールが非常に長くなっています。なぜなら、映画1作と(作中の)アニメ2作分のスタッフが関わっているからです。まさにキャスト・スタッフ、これらすべてに対しての勝負です。これで作品賞を頂けたことは、すごく光栄でうれしく思っています」と、喜びを語られました。
『LOVE LIFE』の深田晃司監督は、作品に関わったスタッフ・俳優さん、及び「LOVE LIFE」という楽曲からこの映画を作ることを許諾してくださった矢野顕子さんへの感謝を述べられた後、「今でも自主映画を作っているような感覚で映画を作っているので、こつこつと精進して映画を作り続けたいです」と今後の抱負を述べて締めくくられました。
楽しかった時間もあっという間に終わり、緞帳がいったん降りた後、記念撮影の席の並びになり、受賞者一人ひとりがカーテンコールで登場して客席からの大きな拍手に。ご登壇者、観客、スタッフの映画愛に包まれて、暖かい雰囲気を共有できて幸せでした。授賞式終了後、ホール内ではご登壇者全員のサインが入ったポスターの写真を撮る方がひっきりなく訪れ、そして会場を出ると、名物のイルミネーションが。お客様は夢見心地で会場を後にしている様子でした。
第14回TAMA映画賞授賞式 | 第32回映画祭TAMA CINEMA FORUM
【23年3月末まで期間限定公開!】第14回TAMA映画賞授賞式 | 映画祭TAMA CINEMA FORUM公式チャンネル