第33回映画祭TAMA CINEMA FORUM
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多摩市立永山公民館(ベルブ永山 3階)
多摩市立関戸公民館(ヴィータコミューネ 7階)
18世紀後半の東北。冷害で苦しむ村で、凛(山田)は人びとから蔑まれながらもたくましく生きていた。そんな彼女の心の救いは、盗人の女神様が宿る早池峰山だった。ある日、飢えから食べ物を盗んだ父親・伊兵衛(永瀬)をかばい、一人山に入る。山の奥深くに現れたのは伝説の存在として恐れられる山男(森山)だった。
大飢饉に襲われた18世紀末の東北の寒村。この頃の日本列島は寒冷期であり、天明の飢饉で、日本全国が貧しさに喘いでいた貧しい時代であった。先代の罪を負った貧しい家の娘・凛は、土地を持たず、埋葬を仕事とし村人から蔑まれる差別も受けていた。この運命を受け入れながらもたくましく生きているが、唯一の心の救いは盗人の女神様が宿る早池峰山だった。
父親・伊兵衛が飢えに苦しみ食べ物を盗んだ罪を自ら被り、村を去る凛。そこで心の救いだった山へ足を踏み入れたことから、人間らしく生きる。これは柳田國男の「遠野物語」から着想を得たオリジナルストーリーとのこと。冷害という自然の前ではあまりにも無力な村社会、その閉鎖性と集団による同調圧力、生け贄という信仰の危うさを通して、一人の女性が自らの意志で人生を選び取るまでを描いている。山での凛の姿は、自分らしく生きること、人間らしさとは何かを考えさせられる。凛の物語と彼女が下した決断は、時代を超えて私たちに深く届く。(勝)
2015年に初⻑編映画『リベリアの白い血』がベルリン国際映画祭パノラマ部門正式出品、ロサンゼルス映画祭で最高賞受賞、16年にインディペンデント・スピリットアワードでジョン・カサヴェテス賞にノミネートされる。20年、⻑編二作目の『アイヌモシㇼ』がトライベッカ映画祭の国際ナラティブ・コンペティション部門で審査員特別賞、グアナファト国際映画祭で最優秀作品賞を受賞。TAMA映画賞受賞作『山女』が長編三作目となる。
兵庫県生まれ。映画解説者。WOWOW「映画工房」、シネマトゥデイ「はみだし映画工房」、BRUTUS「30人のシネマコンシェルジュ」ほか、TV、ラジオ、雑誌、新聞、WEBなどで映画解説を展開中。「スティーヴン・スピルバーグ 映画の子」(KAWADEムック)、「森田芳光全映画」(リトルモア)などに寄稿。関心のないことに関心を持てる若い人材を育成するため「偶然の学校」の代表、社会を前進させるための情報発信を行う新メディア「あしたメディア」の企画担当など多面的に活動中。