第33回映画祭TAMA CINEMA FORUM
多摩市立永山公民館(ベルブ永山 3階)
多摩市立関戸公民館(ヴィータコミューネ 7階)
とある夏、お盆。雨が強く降る日。家を出なくなって久しいナリヤスは、いつものように蒸し暑い部屋で無気力に寝転がって、何をするでもなく暇を持て余していた。突然、玄関の扉が開き入ってきたのは大学時代の友人、シュウタ。久しぶりに会った2人は、なんてことない会話を交わす。そんな、なんてことない時間。のはずなのだが、どこか様子がおかしい。
ささやかな、ある再会のひと時を描きました。派手な映画ではありませんが、なんてことないセリフの一つ一つをこだわりました。“なんてことなさ”を玩味していただけたらと思います。近ごろ、無駄なもの、役に立たないものを疎む、社会の余裕のなさをひしひしと感じます。この映画を作ることは、そんな時代の流れに対する自分なりの抵抗でもあったのだと思います。
1995年生まれ、東京都出身。早稲田大学在学中から自主映画の制作を始める。短編映画『巨人の惑星』がPFFアワード2021に入選。本作『じゃ、また。』はPFFアワード2023に入選し、映画ファン賞(ぴあニスト賞)を受賞。現在は、テアトル新宿のアルバイトスタッフおよび山形国際ドキュメンタリー映画祭の東京事務局スタッフとして働きながら映画制作を続けている。
「最悪や」が口癖の誠は高校生のとき、キャプテンの未生に頼まれ、女子フットサル部の引退試合を手伝った。そのとき、未生の采配によって試合に出られなかった秋保を励まそうとするも、未生に遮られ微妙な空気のまま別れる。卒業してからも秋保を想い続け、ある特技で惹きつけようともがく誠。しかし、不運が続き、現実を突きつけられていくなかで、あの凶日の真実に気づいていく。
本作は主演の田村魁成さんの不運さと妙な特技からアイディアを得て始まったのですが、では運の良さ・悪さとは何なんだという疑問を経て、また村上由規乃さんのある表情に出会ったことで、きっと多くの方に思い当たる節のあるだろう記憶の物語へと変化しました。たまには記憶を曖昧にして生き延びることも、肯定してもらえたらいいなと思っています。
埼玉県出身。学習院大学文学部在学時よりMV制作会社に所属し、卒業後はシナリオ・センター、映画24区、ニューシネマワークショップに通う。2020年製作の『愛のくだらない』が第14回田辺・弁慶映画祭にてグランプリを受賞、テアトル新宿、池袋シネマ・ロサ他で公開された。
アングラ映画界の鬼才を自称するクラレンスは、『インナーチューブ』にて挫折と赤貧の日々を送っていた。彼は『オールドボール』の秘密警察官ミラーによって、不毛な内戦への介入を強いられる。そして再起を賭けた新作映画制作のために、悪友フジキが手作りした自己の意識を映像化、映画化を可能とする装置ボイルド・ブレインを使用。現実と架空の混濁という副作用に蝕まれながら戦地へ赴く。
コラージュアニメという標準的ではない映像表現のため、それだけで不興を買うのではと眠れないこともあった。不安や作業に圧し潰されながらも、主演の金子をはじめとする出演者の怪演もあって、陽気な地獄のような映画になりました。共感やら等身大やら出てこない。もはやどうやって制作したのか憶えていない。見慣れない異常な作風やもしれませんが、これが私達の映画に対する誠意です。
1977年生まれ、東京都出身。新潮社新人賞最終候補作に選出されるが文筆に挫折。音楽活動をしながら、職を転々。2019年コラージュ作家ジャンピエール・フジイとJ&Hフィルムズ結成。第一作『ルギンスキー』が香港国際映画祭、ぴあフィルムフェスティバル、オランダ、カナダ、台湾、フィリピンにて入選入賞。三年を経て再起のため肉体労働賃金と失業保険を以て『オルリック』を制作。
青森県弘前市で暮らす報われない脚本家の山中サダオは、東京から来たグラフィックデザイナーの大島渚と出会い、一目惚れする。大島は山中に取り憑いているらしい、美しい女性の幽霊に心惹かれ、山中と一緒に雪の弘前の街を巡り、山中が書いた脚本の世界を旅する。
冬物語は、現代日本映画を牽引する俳優、松浦祐也主演のラブストーリーです。ラブコメディかもしれないし、もしかするとホラーなのかもしれません。見知らぬ他人同士が偶然出会い、つかの間、響きあうことの可能性/不可能性がテーマです。登場人物は4人の素晴らしい俳優たちと、青森県弘前市に暮らす人々。雪が降っていて、幽霊が出てきて、カレーの匂いがします。何卒肩の力を抜いて、お楽しみいただければ幸いです。
長崎県出身。2006年東京外国語大学フランス語科卒業。(株)サン・アドにて広告制作、企画と演出。17年文化庁の若手映画作家育成プロジェクト、ndjcに選出。短編映画『カレーライス Curry and Rice』を脚本監督。20年TOKYO FILMeX New Director Awardファイナリスト。21年サンダンス・インスティテュート/NHK賞日本代表。22年Talents Tokyo 2022選出。