第27回映画祭TAMA CINEMA FORUM
バレンタインデーの台北。花屋の店主(ジョン・ジェンイン)には、一緒に過ごす彼氏がいない。想いを寄せる女性(チェン・ミッフィー)のために注文の品を作った孤独なパン職人(リン・ジョンユー)は、それが彼女からその恋人へ贈られるものだと知っている。切なさを胸に、花とチョコレートをそれぞれ配達する2人だが、ある事件から行動を共にすることに。
ウェイ・ダーション監督の待望の最新作『52Hzのラヴソング』は、ミュージカル映画です。ウェイ監督のこれまでの作品を観てきた人にとって、この新作はかなり意外な印象を受けるかもしれません。これまでデビュー作の『海角七号 君想う、国境の南』、そして話題作『セデック・バレ』といった作品で、日本と台湾の歴史を背景にした規模の大きな映画を製作してきました。しかし、よく過去の作品を振り返ってみると、ウェイ監督の作品のなかで「音楽」はとても大切な役割を担っています。『海角七号 君想う、国境の南』のなかでは、シューベルトの「野ばら」の切ない響き。そして『セデック・バレ』のセデック族の伝統的な歌も深く印象的に残ります。ウェイ作品のなかで音楽はとても重要な役割を果たしています。そして最新作はミュージカルということで、ウェイ監督の素晴らしい特質が見られます。この幸福感に満ち溢れた映画をお楽しみください。(彰)
1968年生まれ。台湾の巨匠、故・エドワード・ヤン監督のもとで下働きからスタートし、『カップルズ』(96年)の助監督を務める。2008年に監督デビューした『海角七号 君想う国境の南』は台湾映画史上記録的な興行収入を上げて社会現象も巻き起こし、国産映画隆盛の火付け役となる。11年に『セデック・バレ』を制作。14年に原案・脚本の『KANO 1931 海の向こうの甲子園』をプロデュースした。