第27回映画祭TAMA CINEMA FORUM
1950年代から2000年代まで、数多くのハリウッド作品で絵コンテと映画リサーチを担当した職人夫婦を描いたドキュメンタリー。セシル・B・デミル監督の『十戒』、アルフレッド・ヒッチコック監督の『鳥』など100本以上の作品で絵コンテを手がけたハロルド・マイケルソン。そして映画リサーチャーとして活躍した妻のリリアン。映画に愛され、映画を愛した二人の思いや夫婦の心温まるエピソードが綴られていく。
スペクタクル巨編『十戒』(1956年)でモーゼが海を割り奇跡を起こすシーン。名作スリラー『鳥』(63年)で逃げ惑う生徒たちを鳥が襲うシーン。青春映画『卒業』(67年)でミセス・ロビンソンが自宅まで送らせたベンジャミンをエロティックな脚線美で誘惑するあのシーン。
これら映画史に残る場面は、ハロルドのアングルやポジション、構図など完璧にカメラ視点を再現する絵コンテによって作られていたことに驚かされる。また、リサーチャーであるリリアンの作品の時代や背景にリアリティをもたらすため、時代考証などを調べ抜く底知れない探求心が合わさったことで、二人が名監督たちに信頼され、愛されてきたことに感銘を受ける。
数多くの映画で偉業を残しながら、クレジットされず裏方として活躍してきた夫婦がドキュメンタリーの主役として表舞台に出て脚光を浴びたことが喜ばしい。(飯絢)
『007』『ロッキー』『E.T.』『スター・ウォーズ』……ハリウッド映画を彩る映画音楽を題材にしたドキュメンタリー。大ヒットした主題歌やメインテーマ曲など名曲と称される音楽が、映画史に輝く幾多のメロディが、一体どのようにして生まれたのか紐解かれる。ハリウッドを代表する作曲家や監督のインタビューがヒット作の映像と共に映し出されるなかで、映画音楽が誕生して観客に届くまでの知られざる制作過程について描く。
数々の映画音楽と名シーンが次から次に流れる。そして、名曲が誕生した過程や作曲家のこだわり、監督の思いなどが、随所に挟まれるインタビューで語られる。音楽が映画をいかに彩るのか、いかに面白くするのかということを実感せずにはいられない。誰もが一度は耳にしたことのあるあの音楽、映画の情景が頭に浮かぶあのメロディ。それらはどのように生まれたのか、どんな思いが込められているのか、知ることができるとはなんて贅沢なのだろうか。
映画を観ている間、終始劇場があたたかい雰囲気に包まれていたことが印象的だ。こんな映画こそ、劇場で、皆一体となって観てほしいと強く思う。素晴らしき映画体験と劇場体験が約束されている、映画ファンには絶対に観てほしい映画愛に溢れたドキュメンタリー。(志)
1988年生まれ、東京都出身。ライター。「ポパイ」「ブルータス」など雑誌を中心に執筆中。著書にイラストレーターの長場雄との共著「みんなの映画 100選」。ストリートブランド「Young Cinephile」ディレクター。
1987年生まれ、大分県出身のファッションモデル・女優。独創的な世界観とセンスで20代女性の支持を集める。雜誌の他、映画、TVドラマ、バラエティ番組、アーティストMVと多方面で活躍中。企業商品プロデュースや執筆業など様々な分野で多彩な才能を発揮している。主な出演作品に『サッドティー』(14)、『知らない、ふたり』(15)など。