第27回映画祭TAMA CINEMA FORUM
その家族は再婚同士の夫婦、商社勤務の田中信(浅野)と彼に依存気味の奈苗(田中)、そして妻の連れ子の2人の娘たち薫と恵利子。信は良いパパとしてありふれた家族を築く努力をしている。しかし、出向になり工場勤務になったことを奈苗に告げられずにいる。そんな時奈苗が妊娠し、それを契機に長女・薫は露骨に反抗するようになる。そして「本当のパパに会わせてよ」と信を追い詰める……。
家族とは何か? 親子とは? 血の繋がりとは? そして幸せとは何か?
ドラマは淡々と進む。リアルな展開はそれが我が身に起こったことのように徐々に引き込まれてゆく。それは信と奈苗、信と元妻・友佳(寺島)、信と奈苗の元夫・沢田(宮藤)とのそれぞれのシーンで垣間見える。段取り臭さを一切感じさせない秀逸な芝居のリズムは三島監督が役者たちに課したエチュード(即興芝居)の効果か……? 子役たちも負けてはいない。血の繋がっていない娘・薫と元妻・友佳との実子・沙織。複雑な年頃の娘たちの振り切れない表情と台詞が心に突き刺さる。
そしてこの家族の物語はエンドタイトルで終わる訳ではない。映像がホワイトアウトした後、それまでが長いプロローグだと気付く。それが生まれてきた幼な子と本当の家族のもっともっと長い物語のオープニングタイトルなのだと……。(伊)
行方不明だった夫がまるで別人のようになって帰ってきた。急に穏やかで優しくなった夫に戸惑う妻の鳴海(長澤)。夫・真治(松田)は毎日散歩に出かけていく。一方、町では一家惨殺事件が発生し、不可解な現象が続発する。不穏な空気が漂うなか、真治は突然「地球を侵略しに来た」と告げるが……。
「なるほど。それ、もらうよ」、侵略者たちはそう言って人間のアイデンティティともいえるさまざまな「概念」を奪っていく。概念を失った人間はどうなるのか。「自他」を奪われた学歴コンプレックスの刑事は他者への嫉妬をやめ、「所有」を奪われた引きこもりは、物への執着がなくなり開放的になる。大切な概念を失うとともに、そのしがらみから解放された彼らの姿はどこか以前より幸せそうに見える。侵略者が概念を奪うという設定は独創的でありながら、人間の本質に迫る問いかけになっていて考えさせられる。私たち人間にとって一番大切なものは何だろう?
「家族」とは? 「愛」とは? 「人間」とは? 頭の中では理解しているはずなのに上手く言い表せない言葉の数々を、侵略SFという革新的なエンターテインメントによって一つ一つ拾い上げていく本作は、現代社会の不穏さや危うさを風刺するとともに、私たち人間の怠惰がもたらす恐ろしい未来への警告を鳴らしているようだった。(椋)
看護師の美香(石橋)は、日々患者の死に囲まれる仕事に折り合いをつけながら過ごしている。建設現場で日雇いとして働く慎二(池松)は、左目がほとんど見えない。仕事場には仲間がいるが、彼の胸にはいつも漠然とした不安があった。孤独や虚しさを抱えて生きる二人はある日偶然出会い、言葉を交わすようになる。
この映画について話す時、饒舌な主人公たちとは反対に、私たちは初め、多くを語ることができなかった。けれども多くの人が小さな声でこの映画が好きだと表明した。それはきっとこの映画が、観る人のパーソナルな記憶を思い起こさせるからではないだろうか。
美香と慎二の口から出てくるいくつもの言葉たちは、正直に言えば面倒くさいものばかりである。不安な気持ちをまくしたてるように語る慎二に対して、仕事仲間の智之(松田)は「うるさい」と一喝する。当然だ。そんなことをいちいち口にしていたら、この世界で生きていくことができない。けれども、美香と慎二が抱える不安や虚しさは、私たちが隠してきた思いであり、彼らの姿に私たちはこっそりと自分を重ねている。
彼らは散々遠回りをするが、最後には小さな希望を見つける。それはこの世界を生きるための希望であり、いつの時代も変わらずに不安な私たちを助けるものだ。そしてこの映画は、今を生きる私たちにとってそうであるのと同じように、この先の未来を生きる誰かにとっても、大切なものになるのだろう。(尾)
1955年生まれ、兵庫県出身。81年に『しがらみ学園』が第4回ぴあフィルムフェスティバルに入選。83年に『神田川淫乱戦争』で商業映画デビューを果たす。97年の『CURE』で世界から脚光を浴びると、カンヌ国際映画祭では、『回路』(2000年)で国際批評家連盟賞、『トウキョウソナタ』(08年)で「ある視点」部門審査員賞、『岸辺の旅』(14年)で同部門監督賞を受賞するなど国際的評価も高い。16年に『クリーピー 偽りの隣人』、『ダゲレオタイプの女』を手掛け、本年は『散歩する侵略者』の公開に伴い、スピンオフドラマ「予兆 散歩する侵略者」の監督を行い、11月11日より『予兆 散歩する侵略者 劇場版』として劇場公開された。
1983年生まれ、埼玉県出身。大阪芸術大学の卒業制作『剥き出しにっぽん』(2005年)で注目を浴びる。商業映画デビュー作『川の底からこんにちは』(10年)では、モントリオール・ファンタジア映画祭にて最優秀作品賞、ブルーリボン監督賞を史上最年少で受賞。第37回日本アカデミー賞にて最優秀作品賞、最優秀監督賞を受賞した『舟を編む』(13年)や、バンクーバー国際映画祭で観客賞を受賞した『バンクーバーの朝日』(14年)など代表作多数。
1965年生まれ、福岡県出身。アニメ制作会社・亜細亜堂へ入社後フリーとなり、「劇場版クレヨンしんちゃんシリーズ」には第1作目から近年まで関わり続けている。映画初監督作品『マインド・ゲーム』(2004年)は文化庁メディア芸術祭アニメーション部門大賞ほか多くの賞を受賞し、話題となった。本年は『夜明け告げるルーのうた』がアヌシー国際アニメーション映画祭2017で長編部門クリスタル賞を、『夜は短し歩けよ乙女』がオタワ国際アニメーション映画祭長編部門グランプリを受賞。18年にはNetflixより「DEVILMAN crybaby」の配信が控えている。
1972年生まれ、山梨県出身。映像制作集団 空族(くぞく)所属。2003年に発表した処女作『雲の上』が映画美学校映画祭2004にてスカラシップを獲得。これをもとに制作した『国道20号線』を07年に発表。『サウダーヂ』(11年)で第33回ナント三大陸映画祭グランプリ、第64回ロカルノ国際映画祭独立批評家連盟特別賞、高崎映画祭最優秀作品賞、毎日映画コンクール優秀作品賞&監督賞など多数受賞。フランスでは全国公開された。本受賞作は、第69回ロカルノ国際映画祭で若手審査員・最優秀作品賞を受賞している。
1973年生まれ、神奈川県出身。『バタアシ金魚』(90年)で銀幕デビュー。『マイティ・ソー』(2011年)でハリウッドに進出。『私の男』(14年)では、第36回モスクワ国際映画祭でコンペティション部門最優秀男優賞を受賞。第68回カンヌ国際映画祭ある視点部門監督賞を受賞した『岸辺の旅』(15年)、第69回カンヌ国際映画祭ある視点部門審査員賞を受賞した『淵に立つ』(16年)に主演し、アジア・フィルム・アワードにおいて2年連続の受賞。本年はマーティン・スコセッシ監督の『沈黙‐サイレンス‐』(17年)にも出演している。
1990年生まれ、福岡県出身。トム・クルーズ主演の『ラスト・サムライ』(2003年)で映画初出演。『愛の渦』『ぼくたちの家族』『紙の月』(いずれも14年)で、第38回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。16年には『セトウツミ』『永い言い訳』『続・深夜食堂』『裏切りの街』などの多数の映画に出演し、本年は『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』に出演。18年に『散り椿』の公開が控えている。
1985年生まれ。97年に音楽ユニットでデビュー。2009年『愛のむきだし』で映画界に鮮烈に現れ、その後も、映画『川の底からこんにちは』『カケラ』『悪人』(10年)、『夏の終り』(13年)、『駆込み女と駆出し男』(15年)、『愚行録』『海辺の生と死』(17年)、ドラマ「Woman」(13年)、「トットてれび」「江戸川乱歩短編集」(16年)、「カルテット」(17年)、舞台「100万回生きたねこ」(13年)、「かもめ」(16年)、「百鬼オペラ 羅生門」(17年)などの出演作がある。現在、ドラマ「監獄のお姫様」に出演中。受賞歴多数。
1987年生まれ、静岡県出身。2000年に第5回「東宝シンデレラ」オーディションでグランプリを受賞。03年『ロボコン』で映画初主演し、『世界の中心で、愛をさけぶ』(04年)で第28回日本アカデミー賞最優秀助演女優賞を受賞。主な出演作に『涙そうそう』(06年)、『モテキ』(11年)、『潔く柔く』(13年)、『WOOD JOB!(ウッジョブ)~神去なあなあ日常~』(14年)、『海街diary』(15年)など。本年は『散歩する侵略者』、『追憶』、『銀魂』に出演。また、『SING/シング』の吹き替えやミュージカル「キャバレー」の舞台にも挑戦し、活動の場を更に広げている。次回作は18年1月20日公開予定の『嘘を愛する女』。
1978年生まれ、栃木県出身。映画美学校在籍中に瀬々敬久監督に誘われ助監督となり、『ヘヴンズ ストーリー』(2010年)、『舟を編む』(13年)、『岸辺の旅』(15年)などに参加。長編映画初監督作品『ディアーディアー』(15年)は、第39回モントリオール世界映画祭に正式出品され、第16回ニッポン・コネクションにてニッポン・ヴィジョンズ審査員賞を受賞。本年は受賞作『ハローグッバイ』、『望郷』を公開、二宮健監督『MATSUMOTO TRIBE』に本人役で出演した。瀬田なつき監督と演出を手掛けた連続ドラマ「東京アリス」がAmazonプライム・ビデオにて好評配信中。
1979年生まれ、大阪府出身。横浜国立大学大学院環境情報学府を経て、東京芸術大学大学院映像研究科在学中、黒沢清・北野武教授のもと修了制作『彼方からの手紙』(2008年)を監督。『あとのまつり』(09年)などを監督後、『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』(11年)で商業映画監督デビュー。同作は東京、ニューヨーク、パリ、台北など国内外の映画祭で上映された。本年4月に東京・吉祥寺の井の頭恩賜公園の開園100周年を記念して同地を舞台とした青春音楽映画『PARKS パークス』が公開された。
1993年生まれ、神奈川県出身。2008年、TVドラマ「スクラップ・ティーチャー~教師再生~」で俳優デビュー。その後、「弱くても勝てます~青志先生とへっぽこ高校球児の野望~」「水球ヤンキース」(ともに14年)、「学校のカイダン」(15年)、『ライチ☆光クラブ』(16年)など数々の話題作に出演し注目を集める。本年は『帝一の國』『お前はまだグンマを知らない』『トリガール!』『全員死刑』に出演。18年に『不能犯』の公開が控えている。
1996年生まれ、福岡県出身。2009年、舞台「エブリ リトル シング’09」でデビュー。12年に『カルテット!』で映画初主演し、特撮ドラマ「仮面ライダー鎧武/ガイム」(13年)で人気を得る。『ぼんとリンちゃん』(14年)で第36回ヨコハマ映画祭最優秀新人賞を受賞。本年は『PとJK』『ReLIFE リライフ』『想影(おもかげ)』『逆光の頃』『トリガール!』『散歩する侵略者』に出演。18年には『プリンシパル 恋する私はヒロインですか?』『世界でいちばん長い写真』『虹色デイズ』の公開が控えている。
1994年生まれ、東京都出身。4歳からクラシックバレエを始め、2009年よりボストン、カルガリーにダンス留学後13年に帰国、コンテンポラリーダンサーとして活動を始める。15年より舞台や映画へ役者として活動の場を広げ、16年、NODAMAP舞台「逆鱗」に出演。本年は『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』(石井裕也監督)、『PARKS パークス』(瀬田なつき監督)、『密使と番人』(三宅唱監督)が公開された。18年は『きみの鳥はうたえる』(三宅唱監督)ほか主演作の公開が控えている。
1995年生まれ。東京都出身。2008年、黒沢清監督の『トウキョウソナタ』でスクリーンデビュー。NHK連続テレビ小説「まれ」(15年)で一躍国民的人気女優に。16年、日本アカデミー賞新人俳優賞、エランドール賞新人賞を受賞。17年夏に映画『フェリシーと夢のトウシューズ』(日本語版吹き替え/主演)では主題歌と作詞も担当。今後は12月16日に映画『8年越しの花嫁 奇跡の実話』が公開、18年1月には「プルートゥ PLUTO」で初舞台に挑戦し、以降、映画『となりの怪物くん』、『累 -かさね-』が公開待機中である。