第27回映画祭TAMA CINEMA FORUM
7月14日、 勤務先のルーブル美術館でトリュケットという娘に出会ってからというもの、エクトルの頭は彼女でいっぱい。友人パトールも巻き込んでトリュケットとその友達シャルロットを海に誘う。シャルロットの弟ベルティエも仲間に加わり、いざ海を目指してフランスの田舎道を進むが彼らのほかに車はない…。というのも、世の中は経済危機の真っ只中なのだ。そんな時、政府はバカンスを1ヶ月短縮することを決定し、国民に早々に仕事を再開するよう要請?! はたして彼らは無事に海にたどり着けるのだろうか?
2013年カンヌ映画祭監督週間出品されたフランスで最も重要視されている監督の長編デビュー作。
経済危機の状況のなかでも全く関係なく、自由を求め人生を謳歌している若者たちは皆個性的で、風刺の効いたシュールなブラックジョーク、コミカルさを煽る構図や小道具、カラフルな色彩の素晴らしさなどが満載のとにかく楽しいバカンス映画である。
また、通常1秒24コマの映像を22,5コマで撮影して、早送りされているような感覚を生み出すことにより、コミカルさを増幅させる作りは、監督のコメディに対しての並々ならぬこだわりが感じられる。
ゴダールやブニュエルのように現代社会を痛烈に批判し、笑いと風刺のバランスが絶妙にとれた作品でありながら、全く新しいペレジャトコ監督の個性溢れる映画をご堪能ください。(飯絢)
フランス領ギアナの観光再開発のため、アマゾン初のインドア・スキー場“ギュイアネージュ”が建設される。その現場にヨーロッパの基準を持ち込むべく、規範省のインターン、マルク・シャテーヌが調査業務のため派遣されて来た。ところが、ジャングルの中で迷い災難に次ぐ災難。ガイドとしてあてがわれた相棒は、あいにくのセクシー美女ターザン。それよりもっとひどいのは、彼女がとんでもない破天荒で頑固者なこと。マルクは、現地人とフランス本国との板挟みに遭い…。
前作、『7月14日の娘』に続き、日本でも人気のあるヴァンサン・マケーニュ、ヴィマラ・ポンスと共に作り上げた最新作。デビュー作の評価が高かったため、今作はフランス領ギアナのジャングルを舞台にかなりの予算を得て、フィジカル度、笑いも格段にグレードアップしたアドベンチャー大作。
舞台出身のヴァンサン・マケーニュと、サーカスで修業を積んだという変わった経歴をもつヴィマラ・ポンスの肢体を生かした1つ1つのアクションがおかしく、香港コメディにも似た直感的に大笑いできる作品である。監督は1シーンに必ずギャグを入れてくるため、俳優たちも笑いを堪えるのが大変だったそうである。
前作同様、文明に対する自虐や皮肉、政治や社会を鋭く嘲笑う手口が絶妙に描かれている。そして、フランスのジャズミュージシャンによる耳に残るサウンドトラックは、映画をより一層笑いへと導き、楽しさを倍増させてくれる。(飯絢)
ライター・編集者・翻訳者・フランス語講師。映画・音楽・デザイン・知育玩具・絵本などの分野を中心に、さまざまな媒体で執筆活動を行なってきた。主要な編・著書に、「モンド・ミュージック」、「ひとり」、「EDU-TOY」、「グラフィックデザイナーのブックデザイン」、「ROVAのフレンチカルチャー A to Z」、「小柳帝のバビロンノート 映画についての覚書1・2」、また、翻訳書に「ぼくの伯父さんの休暇」、「サヴィニャック ポスター A-Z」などがある。その他、CDやDVDの解説、映画パンフレットの執筆など多数。自身が主宰するフランス語教室ROVAは、今年で18周年を迎えた。