第29回映画祭TAMA CINEMA FORUM

プログラム紹介

【B-5】日本のジャーナリズムを考える2019

11/30[土] パルテノン多摩小ホール

チケット料金

一般
前売:1,200円 / 当日:1,400円
子ども(4歳~小学生)
前売:800円 / 当日:900円

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記者たち ~衝撃と畏怖の真実~

  • 2017年/アメリカ/ツイン配給/91分
  • 監督・製作=ロブ・ライナー
  • 製作=マシュー・ジョージ、ミシェル・ライナー、エリザベス・A・ベル
  • 脚本=ジョーイ・ハートストーン
  • 撮影=バリー・マーコウィッツ
  • 音楽=ジェフ・ビール
  • 編集=ボブ・ジョイス
  • 出演=ウディ・ハレルソン、ジェームズ・マースデン、ロブ・ライナー、ジェシカ・ビール、ミラ・ジョヴォヴィッチ、トミー・リー・ジョーンズ

ストーリー

2002年、ブッシュ大統領は「大量破壊兵器所持」を理由にイラク侵攻に踏み切ろうとしていた。中堅新聞社ナイト・リッダーのワシントン支局長ジョン(R・ライナー)は部下のジョナサン(W・ハレルソン)、ウォーレン(J・マースデン)、そして元従軍記者だったジョー(T・L・ジョーンズ)に取材を指示する。だが、破壊兵器の証拠は見つからず、それが政府のねつ造や情報操作であることを突き止めるが……。

コメント

権力者があるものを「ない」ないものを「ある」と放言し、周囲がそれを追従するように動く世間の傾向は、今の日本人の多くが強く感じているところだろう。

9.11の同時多発テロをきっかけとし、大量破壊兵器を所持しているという口実でイラクに攻め込んだブッシュ政権。NYタイムスやワシントンポストといった大手新聞社がそれを支持するなか、中堅新聞社ナイト・リッダーは地道な取材を続け、政府が「結論ありき」の調査や情報操作をしている事実を知る。

この映画で目を引かれたのは、ナイト・リッダーの記者たちが分析官や職員といった政府や軍の関係者に取材を行っていた姿だ。事実があやふやな政府発表を鵜呑みにせず、さまざまな情報を集めて真相を究明する。そういった辛抱強い地道な努力の積み重ねが誠実なジャーナリズムを形成するのだろう。映画の最後に出てくる「数字」を眺めながら、そんなことを考えた。(理)

新聞記者

  • 2019年/2019『新聞記者』フィルムパートナーズ製作/スターサンズ、イオンエンターテイメント配給/113分
  • 監督・脚本=藤井道人
  • 製作=河村光庸
  • 原案=望月衣塑子、河村光庸
  • 脚本=詩森ろば、高石明彦
  • 撮影=今村圭佑
  • 音楽=岩代太郎
  • 編集=古川達馬
  • 出演=シム・ウンギョン、松坂桃李/本田翼、岡山天音、郭智博、長田成哉、宮野陽名/高橋努、西田尚美、高橋和也/北村有起也、田中哲司

ストーリー

誤報で父を亡くした新聞記者・吉岡(シム・ウンギョン)のもとに、大学新設計画に関する極秘情報が届いた。一方、政権に不都合な情報をコントロールする立場の官僚・杉原(松坂)は、元上司の自殺をきっかけにして国家の闇に気づく。記者と官僚――立場の違いを超えて協力し、真実を究明する二人の前にある事実が浮かび上がってくる。

コメント

無軌道な権力とそれを無批判に忖度する者たち、という現代日本のいびつな社会構造を描いた作品。不都合な真実を隠ぺいしようとする者との攻防のなかで、自身のルーツや置かれている立場と向き合い、葛藤する記者とエリート官僚を、『サニー 永遠の仲間たち』『怪しい彼女』のシム・ウンギョンと『孤狼の血』『娼年』の松坂桃李が見事に演じている。それに加え、抑制の効いた演出や音楽、挑戦的な長いカットがテーマの生々しさを際立たせている。

この映画にはステレオタイプの悪徳政治家や黒幕が登場しない。明確な敵が不在だからこそ、輪郭のないものに忠実な内閣情報調査室の多田(田中)の振る舞いが恐ろしく感じられる。誰しも多田のようになる可能性がある。だからこそ、正義を知り、良識を持ち続ける必要があるのだろう。ラストシーンで向かい合う吉岡と杉原の姿を見て、心が引き裂かれそうな思いに駆られた。(理)

ゲスト紹介

河村 光庸 プロデューサー

Kawamura Mitsunobu

1998年にアーティストハウスを設立し数々のヒット書籍を手掛ける一方、映画出資にも参画し始め、映画配給会社アーティストフィルムを設立。2008年にスターサンズを設立し、『牛の鈴音』(09年)、『息もできない』(10年)などを配給。エグゼクティヴ・プロデューサーを務めた『かぞくのくに』(11年)では藤本賞特別賞を受賞。企画・製作作品に『あゝ、荒野』(17年)、『愛しのアイリーン』(18年)など。

松崎 健夫 氏

Matsuzaki Takeo

映画評論家。東京藝術大学大学院映像研究科映画専攻修了。テレビ・映画の撮影現場を経て、映画専門の執筆業に転向。「ぷらすと」、「japanぐる〜ヴ」などテレビ・ラジオ・ネット配信番組に出演中。「キネマ旬報」、「ELLE」、「FINDERS」、「CINEMORE」、映画の劇場用パンフレットなどに多数寄稿。現在、キネマ旬報ベスト・テン選考委員、ELLEシネマ大賞、田辺・弁慶映画祭、京都国際映画祭クリエイターズ・ファクトリー部門の審査員を務めている。共著「現代映画用語事典」(キネマ旬報社)ほか。

プログラム一覧

成田凌氏、今泉力哉監督、木村和平氏(写真家)
前田敦子氏、黒沢清監督
河村光庸プロデューサー 松崎健夫氏(映画評論家)※ビデオメッセージあり(シム・ウンギョン氏、藤井道人監督)
山戸結希監督、志磨遼平氏(ドレスコーズ)
横尾初喜監督、井浦新氏
鈴木卓爾監督、あがた森魚氏(ミュージシャン)、井浦新氏、大森元気氏
鈴木洋平監督、柳英里紗氏、杉原永純氏(元YCAMキュレーター、映画キュレーター、プロデューサー)
アンジャリ<八尋美樹>氏(インド楽しいこと案内人)
佐藤零郎監督、渥美喜子氏(gojo/映画ライター・シネ砦集団代表)
中原仁氏(音楽プロデューサー)
石井達也監督、根矢涼香氏、松崎健夫氏(映画評論家)
寺尾紗穂氏(音楽家・文筆家、「原発労働者」著者)
丸山昇一氏(脚本家)
杉田協士監督、宮崎大祐監督
団地団
坂本浩一監督、山本千尋氏
今泉力哉監督、北條誠人氏(ユーロスペース支配人)
長久允監督、奥山大史監督
宇賀那健一監督、山口明氏(デザイナー)