第29回映画祭TAMA CINEMA FORUM
保育(対象は1歳以上)は先着10名です。上映前日の17:00までに下記フォームまたは事務局までお電話(080-5450-7204/平日9:00-17:00)にてお申込ください。
※申込フォームはお子さま1人につき1回ずつ入力をお願いいたします。
大臣という政府要職に就いたギオルギ(N・タヴァゼ)は、新調した椅子の座り心地を満喫していた。彼は妻を早くに亡くし、家を出ている上の娘との関係は微妙だが、息子や義理の姉との生活は安定していた。元バイオリニストとの恋も実らせた彼だったが、選挙で敗北して大臣の職を辞すことになり、困難が押し寄せる――。
ジョージアと聞いてピンとこない方は、「グルジア」というかつての呼称はご存じだろうか(長年「グルジア」が日本での呼称だったが2015年に「ジョージア」に変更された)。本作は、そのジョージア映画界の長老であり、同国議会で副議長を務めるなど政界の経験もあるエルダル・シェンゲラヤ監督によるコメディ。古今東西においてみられる権力や地位にまつわる人々の行動特性を印象的に描いており、そのメッセージは普遍的である。
インラインスケート登場のインパクトは大きかったものの、椅子がふわりと動き出し、いつの間にか意思をもち、私たちに向かってささやく展開で、さらにナナメ上に。このような演出によって物語の世界に引き込まれていくのだが、そうして気づかされるのは、政治のような明らかな権力のみならず、家庭での役割や雇用などの変化も、人々の関係に大きく作用する様子である。そして、主人公があらためて思い至る葡萄畑の広がる故郷と家族の価値。人生の過ごし方が話題になっているいま、本作の問いかけは無視できないのではないか。(渉)