第29回映画祭TAMA CINEMA FORUM
2年間交際していた女性から、電話で「私を撮らなかったこと、後悔するよ」と告げられた。彼女はかつて石井達也監督との関係が原因で心のバランスを崩し、精神病棟に入院していた。石井監督はそんな彼女の姿をカメラに収め続けていたが、関係が悪化するにつれてカメラを回さなくなっていく。電話の翌日、カメラを手に彼女の家を訪れると、彼女は2年分の記憶を失っていた……。記憶を失った恋人の姿を通して真実の愛を追求した石井監督自身のセルフドキュメンタリー。
ドキュメンタリーと劇映画の境界線とは何か? この映画を観ると元々そんなものはなく、そんなカテゴリー分けすら馬鹿々々しく思える。スクリーンに映し出されたものは昨年の12月からの数か月間、石井監督の回りで起きた出来事をただひたすら撮り続けた映像だけ。何も臆することなく、何の衒いもなく、すべてを曝け出した裸の石井達也と裸の福田芽衣の二人の愛のカタチがそこに写っている。しかしその衝撃的な映像は観客に呼吸すら忘れさせ、あるがまま故に鮮烈な印象を脳裏に焼き付ける。撮り続けることに映像の力を、いや愛の力を感じずにはいられない。
『万歳!ここは愛の道』あっぱれ!!(逹)
1998年生まれ、茨城県出身。東放学園映画専門学校卒業。19歳で制作した『すばらしき世界』(2018年)が、PFFアワード2018にて審査員特別賞及び映画ファン賞、田辺・弁慶映画祭にてキネマイスター賞を受賞。このほか、第19回TAMA NEW WAVE ある視点や、海外では全州国際映画祭(韓国)などで上映。2019年7月、新作『万歳!ここは愛の道』をテアトル新宿にて限定公開した。
1994年生まれ、茨城県出身。女優。立教大学在学中から自主制作映画に多数出演。2017年、第18回TAMA NEW WAVEにてグランプリ・ベスト女優賞・ベスト男優賞の3冠受賞した大野大輔監督作『ウルフなシッシー』に主演。19年、池袋のシネマロサにて「the face vol.2」根矢涼香特集が開催され、1週間で約1,000人を動員した。主な出演作に『したさきのさき』(14年/中山剛平監督)、『神と人との間』(17年/内田英治監督)、『少女邂逅』(17年/枝優花監督)、『三つの朝』(18年/根岸理沙監督)など。
映画評論家。東京藝術大学大学院映像研究科映画専攻修了。テレビ・映画の撮影現場を経て、映画専門の執筆業に転向。「ぷらすと」、「japanぐる〜ヴ」などテレビ・ラジオ・ネット配信番組に出演中。「キネマ旬報」、「ELLE」、「FINDERS」、「CINEMORE」、映画の劇場用パンフレットなどに多数寄稿。現在、キネマ旬報ベスト・テン選考委員、ELLEシネマ大賞、田辺・弁慶映画祭、京都国際映画祭クリエイターズ・ファクトリー部門の審査員を務めている。共著「現代映画用語事典」(キネマ旬報社)ほか。