第29回映画祭TAMA CINEMA FORUM

プログラム紹介

【C-3】釜ヶ崎で逞しく生きる

11/24[日] ベルブホール

チケット料金

一般
前売:1,200円 / 当日:1,400円
子ども(4歳~小学生)
前売:800円 / 当日:900円

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(秘)色情めす市場

  • 1974年/日活製作・配給/83分
  • 監督=田中登
  • 脚本=いどあきお
  • 撮影=安藤庄平
  • 音楽=樋口康雄
  • 編集=鈴木晄
  • 出演=芹明香、夢村四郎、花柳幻舟、宮下順子、絵沢萠子、萩原朔美、岡本章

ストーリー

舞台は大阪の旧赤線地帯(釜ヶ崎)。19歳のトメ(芹)はドヤ街の近くで売春婦をしている。弟の実夫(夢村)は知的障碍者。母のよね(花柳)は40歳を過ぎてなお現役の売春婦だが、あぶれることが多い。ある日トメは、よねの情夫と寝たことで、よねと母娘喧嘩をしてしまう……。

コメント

売春防止法が施工されて20年経つものの根強く残る売春婦とその街の人々の生きざまが鮮烈に描かれている。天上へと聳え立つ通天閣からズームアウトして映る釜ヶ崎の石段で「うちな、なんや逆らいたいんや」というセリフを発して街娼になったトメ。そのセリフは自分を売春婦として雇っていた百合(絵沢)への抵抗であるだけでなく、釜ヶ崎に生まれた己の運命への抵抗の意が含まれている。底辺の薄汚れた街で売春婦の娘として生まれ売春婦として生きる自らの生へのそこはかとない耐え難さが、その言葉を口にさせる。ここではないどこかを無意識的に求めつつここで生きる他ない彼女は、自らの肉体を男の快楽に捧げながらこの地上の世界を彷徨する。汚らわしい自らの運命を顧みつつそれでもなおこの生を力強く生きる彼女の倒立を見よ。それは内と外、天と地を転倒させる滑稽だが美しい技芸だ。変わりゆく時代と街のなかで取り残された人々の持つ猥雑な生命力を捉えたロマンポルノの枠を越えた傑作である。(佐友)

月夜釜合戦

  • 2017年/映画「月夜釜合戦」製作委員会製作・配給/115分
  • 監督・脚本=佐藤零郎
  • 撮影=小田切瑞穂
  • 美術=西村立志
  • 音楽=井上譲、浦田晴夫、岳陽
  • 編集=佐藤零郎、板倉善之
  • 出演=太田直里、川瀬陽太、門戸紡、渋川清彦、カズ、西山真来、デカルコ・マリィ、緒方晋

ストーリー

ある日、飛田遊郭をしきる釜足組の大事な代紋入りの「お釜の盃」が盗まれた。大慌てで釜を探す釜足組のチンピラは、街中の釜を買い漁り始める。釜の値は高騰し、「釜が売れる!」という噂を耳にした街の人たちは、釜泥棒に躍起となった。泥棒の大洞(川瀬)は、この儲け話にしたり顔で参加する。私娼のメイ(太田)、孤児の貫太郎(門戸)も、あれよあれよとこの騒動に巻き込まれていく。

コメント

16mmフィルムで釜ヶ崎オールロケ撮影を行った佐藤監督は、人間のおかしみを描くとともに切実な状況にコネクトしている。オリンピックだ万博だ、ともっともらしい言葉で作り変えられる街並み。かつての臭いがなくなり、そこにいた人間の営みや路地裏の怪しさは跡形もなく書き換えられていく。現在の釜ヶ崎の東には、『(秘)色情めす市場』に出てきた通天閣よりも高いあべのハルカスが聳え立っている。

闇鍋のように何が蠢いているかわからないなか、有象無象が行き交い泥のように眠る。安全圏と思ってみている人は本当にそうなのか。巧妙かつ狡猾に刷り込まれるOBEYをかいくぐり、茹でられる前に踊りたい。赤いスカートの女が無縁仏の眠る墓地で踊る命のきらめき。

これは釜ヶ崎だけではなく、東京でも起きていることだ。なじみにしていた駅前のカフェが再開発で店を閉めてしまった。このカフェでは映画の上映も行っていて、動かない映写機にあの夜がこびりついていた。なかったことにされる前に狼煙をあげる。動くな、死ね、甦れ!(内)

ゲスト紹介

佐藤 零郎 監督

Sato Reo

1981年生まれ、京都府出身。2005年より映画監督佐藤真に師事し、ドキュメンタリーを学ぶ。07年、大阪長居公園テント村の野宿生活者たちの姿を記録した『長居青春酔夢歌』がYIDFFアジア千波万波(2009)にノミネート。個々人としてドキュメンタリーを制作するのではなく、集団的な批評や議論を必要とした関西の若手ドキュメンタリストの集団NDS(中崎町ドキュメンタリースペース)の立ち上げに関わる。「映画と社会変革」を自身の創作活動のテーマとしている。

渥美 喜子 氏

gojo

1979年生まれ、大阪府出身。(株)東京渥美組代表取締役。映画批評誌「シネ砦」編集長。gojogojo.com

プログラム一覧

成田凌氏、今泉力哉監督、木村和平氏(写真家)
前田敦子氏、黒沢清監督
河村光庸プロデューサー 松崎健夫氏(映画評論家)※ビデオメッセージあり(シム・ウンギョン氏、藤井道人監督)
山戸結希監督、志磨遼平氏(ドレスコーズ)
横尾初喜監督、井浦新氏
鈴木卓爾監督、あがた森魚氏(ミュージシャン)、井浦新氏、大森元気氏
鈴木洋平監督、柳英里紗氏、杉原永純氏(元YCAMキュレーター、映画キュレーター、プロデューサー)
アンジャリ<八尋美樹>氏(インド楽しいこと案内人)
佐藤零郎監督、渥美喜子氏(gojo/映画ライター・シネ砦集団代表)
中原仁氏(音楽プロデューサー)
石井達也監督、根矢涼香氏、松崎健夫氏(映画評論家)
寺尾紗穂氏(音楽家・文筆家、「原発労働者」著者)
丸山昇一氏(脚本家)
杉田協士監督、宮崎大祐監督
団地団
坂本浩一監督、山本千尋氏
今泉力哉監督、北條誠人氏(ユーロスペース支配人)
長久允監督、奥山大史監督
宇賀那健一監督、山口明氏(デザイナー)