第29回映画祭TAMA CINEMA FORUM
出張が入りデンマーク旅行に行けなくなったと恋人から告げられた咲子。一人で旅行に行くことになり一度は出発するもののなぜか戻ってきてしまい、家にいながらデンマークにいるふりを始める。しかし偶然出会った旅行者を家に泊めることになり──
どんな映画をつくろうか考えていたときに、スーツケースを持った女性が旅行に行こうと家を出るが途中の駅で空港に向かうのをやめてしまうという光景が浮かんだ。自分は旅行したいんだなと思った。一方、偶然もらった仕事で遠方にいたとき、どこに行っても同じだなとふと思う瞬間があった。この旅に出たい、どこに行っても同じという2つの感覚から始まって『ワンダラー』ができた。
1992年生まれ、東京都出身。東京大学文学部在学中に映画制作を始める。卒業後、映画美学校フィクション・コース初等科に入学。初等科修了後、現在は高等科に在籍中。『ワンダラー』は第30回東京学生映画祭、PFFアワード2019に入選。
ある夜レイは、幼い頃に母との離婚で離れ離れになってしまった実の父に会いたいと強く願う。内向的なレイの心に情熱がともる。父との再会を通して、心に秘めていた家族への思いが浮かび上がっていく。
離婚なんてめずらしくないよ、同情してほしいの? でも家族っていいもんでしょ……とか他人に言われて、ほんとうは「そんなの私が決めることだ!」って大きな声で叫びたかった。だけど言えなかったから、映画をやっていて、よかったです。この映画を一度きりの上映に選んでくれた人がいて、本当に嬉しかったです。私のエゴだけど、それでもこの作品で、誰かの心を少しでもとかすことができたなら……と願っています。
1990年生まれ、埼玉県出身。上智大学文学部哲学科在学中に自主映画をつくり始める。MOOSIC LAB2014に中編『おばけ』を出品、女優賞、ミュージシャン賞を受賞。その後、東京藝術大学大学院映像研究科映画専攻で編集を勉強し、「十月の月」(挫・人間)などMVの監督や、『食べる女』にアシスタントプロデューサーで参加。オムニバス映画『21世紀の女の子』の一編『reborn』を監督するなど活動を続けている。
主人公は自主映画の監督。一人でコツコツと日々映画制作をしている。そんな彼の孤独な作業を、空の彼方から見守る星屑がある。星屑の雑談とカメラを通して、男の生活や、映画制作のさまざまな局面が語られる。虚と実の狭間を行き交い、この映画自体を、内側と外側の両側から作り上げていく男と、夜空の星屑がいつしか感応する。
本作は「映画に愛を込めて」「やりたい事だけ全部やる」の2つを信念に作り上げた自伝自主映画です。制作途中、つくづく感じたのは、僕の映画は100%肉体労働だなってこと。芸術の「げ」の字も、映画の「え」の字もまるで見えないまま走り出して、木を切ったり、塗装したり、電気工作したり、山に登ったり、川に潜ったり、もがき苦しみながらいつも必死で「映画」を探していました。『おばけ』にはそれが全部入っています。
1979年生まれ、大阪府出身。2013年頃、映画監督の友人がカメラを貸してくれたことがきっかけで、なんとなく映画制作を始める。これまでに『みちくさ』『船』『風船』などの中短編を制作。長編は今回が初めて。
愛しているからこそ抱けない男と愛しているからこそ抱かれたい女の、愛とSEXの形をめぐる人間ドラマ。人材会社の営業職を勤める新⽥純(26歳)と⼤学⽣の白井結衣(21歳)は、付き合って7ヶ月のカップル。二人は仲睦まじい関係であったが、純は結衣を抱けずにいた。『愛しているからこそ抱けない』純と、『愛しているからこそ抱かれたい』結衣。⼆⼈の愛の形の違いは、結衣が、「純の秘密」を知ったことをきっかけに対⽴する。
この物語に触れていただけることに、僕は心から幸せを感じます。ここに生きる人たちと、それを観る人たちがどこかで重なって、その人やその周りの人たちが少しでも救われることを、僅かながらにも期待しています。
1992年生まれ、広島県出身。高校卒業後、東京学芸大学表現コミュニケーション専攻に進学。舞台芸術をはじめとする一般芸術を学ぶ。その後、ニューシネマワークショップを受講。現在はフリーランスとしてWebCMなどの制作会社にて制作・ディレクターを勤めながら自身の自主映画制作活動を行なっている。初長編として挑んだ『愛うつつ』がカナザワ映画祭2019「期待の新人監督」にて上映。
祖父の家に居候をする、美大生のアミ。大人になるアミとは反対に、どんどんボケていき、子供返りするおじいさん。やがて、二人の感受性が重なる。
自分とじぃちゃんの実話を元に作った映画なので、ご覧いただけたら嬉しいです。
1985年生まれ、愛知県出身。多摩美術大学グラフィックデザイン科卒業、AOI Pro.所属CMディレクター
東京で民泊を営む李風は、近所で個展を開いていた画家の王洋と出会う。李風は、王洋に民泊で絵を飾ることと接客の手伝いを提案し、二人の同居生活が始まる。ある日、王洋の元カノが泊まりに来るのだが……。
本作は、日本を舞台にした中国人青年たちの切ない話で、未熟な私には魅力ありすぎるアマチュアの役者さんと、主に在日の留学生のスタッフたちに集まっていただいて作った、初めての長編映画作品です。20代の若者の孤独と、自由でかつ真摯な感情、他人と自分に対する迷い、そしてその後悔をテーマにしています。青春の痛み、辛さ、そして幸福感を、観客の皆様にご覧いただければ、大変嬉しく思います。
1992年生まれ、中国四川省出身。2015年に来日後、2017年立教大学大学院に入学。万田邦敏教授の元で映画演出を学び、修了作品として本作を製作した。現在はフリーランスで映像関係の仕事をしている。
1981年生まれ、福島県出身。2009 年『最低』で第10回TAMA NEW WAVEグランプリ受賞。2010年『たまの映画』で商業監督デビュー。代表作に『サッドティー』(13年)、『知らない、ふたり』(16年)など。18年『パンとバスと2度目のハツコイ』で第10回TAMA映画賞最優秀新進監督賞を受賞。本年は4月公開の『愛がなんだ』が大ヒットを記録。最新作『アイネクライネナハトムジーク』も絶賛公開中。公開待機作に田中圭主演の『mellow』、宮沢氷魚主演の『his』、若葉竜也主演の『街の上で』(以上20年公開予定)がある。
1961年生まれ、静岡県出身。有限会社ユーロスペース支配人。法政大学経済学部経済学科卒業。大学在学中から映画の自主上映に携わる。85年にユーロスペースの前身「欧日協会」に入社。87年からユーロスペースの支配人となる。2006年に渋谷区桜丘にあった劇場を渋谷区円山町に移転。劇場の支配人のほかにアキ・カウリスマキ監督の『希望のかなた』(17年)などの自社の配給を担当したり、特集上映<原爆と銀幕―止まった時計と動き始めた映画表現>(16年)を企画。SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2018では国内審査員をつとめる。