第29回映画祭TAMA CINEMA FORUM
行きつけのバーで知り合ったピアニスト直子(りりィ)と一夜を過ごした帰路、殺し屋・鳴海昌平(松田)は正体不明の組織に拉致され、直子を返す条件として殺しを依頼される。相手は組織を知り過ぎた殺し屋、岡島(青木)。岡島は海外への逃避を図り、最後の夜をホテルで過ごすが、そこに拉致されているはずの直子が現れる。鳴海は岡島を狙撃した後、組織から再度殺しを依頼される。
「遊戯」シリーズ第3作であり最後の作品。過去2作と異なりコミカルな要素を一切省き、削ぎ落としたセリフでハードボイルドの極限を見せる。あえてカテゴリー分けするならば松田優作のアクション俳優としての最後の作品であり、それまでのアクション俳優としての流れを断ち切った次作の主演映画『野獣死すべし』の演技の萌芽が見られる。松田優作主演映画の最重要作品のひとつ。
脚本家丸山昇一の初の劇場映画であるが、デビュー作であるテレビドラマ「探偵物語」のハードな部分を徹底させた作品であり、以降のキャリアを決定づける作品となった。
大人の雰囲気のりりィとまだあどけなさが残る森下愛子の好演、絵画のような映像美が楽しめる。
企画:黒澤満、監督:村川透、撮影:仙元誠三、脚本:丸山昇一と、松田優作が信頼するチームの作品。(秀)
かつて戦場カメラマンとして各国の紛争地帯を撮影していた伊達(松田)は、現在は翻訳家として生活しているが、戦場で培った野獣のような感性を磨き、銀行強盗を計画する。同じ匂いのする真田(鹿賀)を誘って銀行を襲撃するも、以前から伊達を探っていた刑事(室田)の執拗な追跡に周到な計画が綻んでしまう。
「遊戯」シリーズなどのヒットで名実ともにアクションスターとなった松田優作が、『蘇える金狼』に続きハードボイルド作家大藪春彦の原作で挑んだ野心作。スタッフには黒澤満プロデューサー、村川透監督、仙元誠三撮影など、松田優作の信頼厚い人材に加え、『処刑遊戯』に続いて丸山昇一を脚本に招き、主人公の闇の深さを描き出すことに成功している。
それまでの松田優作の主演作品とは色合いを異にし、精悍な肉体の追求は鳴りを潜め、戦場カメラマンとしての過去を深い闇とほとばしる狂気との強いコントラストに重点を置かれた作品となっている。松田優作も主人公の内に秘めた狂気を再現すべく、過酷な減量に加え奥歯を抜いて顔を細く見せるなどの役作りを徹底して撮影に挑んだ。その演技が功を奏し、主人公の野獣の本能が目覚めてからの鬼気迫る演技には躍動感が漲り、それまでの閉塞感漂う流れを一気に吹き飛ばす力を持っている。(丈)
1948年生まれ、宮崎県出身。脚本家。テレビドラマ「探偵物語」でデビュー。松田優作主演『処刑遊戯』(79年)で劇場映画デビュー。その後、『野獣死すべし』(80年)、『ヨコハマBJブルース』(81年)の脚本を執筆、松田優作監督脚本主演『ア・ホーマンス』(86年)では共同脚本。その他代表作として『化石の荒野』(82年)、『犬、走る DOG RACE』(98年)、『カメレオン』(2008年)、『行きずりの街』(10年)。テレビドラマでは「プロハンター」、「あぶない刑事」など人気シリーズを手掛ける。