第32回映画祭TAMA CINEMA FORUM
多摩市立永山公民館(ベルブ永山)
多摩市立関戸公民館(ヴィータコミューネ)
インドカレー屋で従兄弟への恋心を語る友達に適当に相槌を打ち、ラッシーを飲み干す私。母と二人、認知症を患う祖母を介護する日々を送っている私にとって、友達との時間は唯一の息抜きであった。ある日、私のもとへ友達から泣きながら電話がかかってくる。
「……殺しちゃったかもしれへん」
その日から、一時的に実家を離れることになった私だったが、依然として重たい何かから解放されることはなく、ぼんやりと異国の大河に思いを馳せる。
死について、日常の一部として向き合う作品を作りたいと脚本を書いたのですが、実際に何度か直面した時に、その感覚が分からなくなることがありました。日常が続いているのは、というか続いていて欲しいのはむしろ自分以外で、そういう時に、近所のカレー屋とか、遠い国の川とか、従兄弟に恋する友達みたいな、私は関係ありませんよという顔で傍を素通りしていくものたちの、愛おしさみたいなものと向き合いたかったのかなと、今は思います。
1999年生まれ、京都府出身。現在は立教大学の大学院にて映画制作を学んでいる。元々創作が好きだったこともあり、大学在学中に映画美学校に通い始める。初監督短編『幸福キロカロリー』(2020年)がゆうばり国際ファンタスティック映画祭にて入選。『ガンガー様の魚』(21年)は初の中編映画となる。
夏休みに入る少し前、高校3年生の夏帆は制服のスカートを着た自分の姿を見ることにとうとう耐えられなくなっていた。母親と共に別荘を売る準備に向かうが、父親はなかなか現れず。そんななか、湖である女性と出会い……。静かな怒り、確かな抵抗とともに過ごす夏の半ばの5日間を描いた、クィアのためのカミング・オブ・エイジ・ムービー。
いつかどうにかなるというような祈りを持ち続けることが日々難しくなっていくのを感じています。この映画はそのようなどうしようもない現状を直接的に改善するものでも、即時的な強度を持って連帯するものでもありません。でも、冷笑はせず、何が今必要であるかを考え、真摯な態度で作りました。そういうものを必要としている方に、観ていただけたら嬉しいです。
1998年生まれ、東京都出身。慶應義塾大学環境情報学部在学中。
第二次世界大戦前夜の日本。熊野邸の妾、きし乃は弟の戦死の報を受け、恋人と心中を図ろうと足を踏み入れた山奥で浅次郎と出会う。浅次郎にはビリヤードの世界チャンピオンになるという壮大な夢があったが、病気のため命は長くはないと知る。きし乃は熊野邸に忍び込み自身の大切な曲を浅次郎に聞かせる。浅次郎はきし乃の運命を賭けて熊野邸の主とビリヤード勝負に挑む。
私の祖父が生きた時代の記憶を映画として残したいと思ったことがこの物語の発端です。そうすることで私自身が今ここに存在する意味を知りたかったのかもしれません。
この映画で描きたかったことは戦争の悲惨さや過去の過ちについてではなく、今を生きる私たちと同じように、誰かを愛したり、傷ついたり、それでも生きていこうと必死になっている人間たちの呼吸です。
1986年生まれ、岡山県津山市出身。大学時代に映画監督を志し、自主映画を撮り始める。大学卒業後、フリーランスの演出部・制作部として活動開始。初長編監督作品『ナグラチームが解散する日』は、2017年に劇場公開され、同年の新藤兼人賞候補にも選出された。
小説家を目指す主人公は、水商売の女性や風俗嬢の送迎運転手として働きながら執筆に励んでいる。デビューの兆しは一向に訪れず、恋人からも小説を酷評された末、振られてしまう。さらに、関係を持とうとした送迎相手の女性からも、高飛車な態度を取ったことからこっぴどく叱られる。煩悶する主人公に、同い年で知人の売れっ子小説家の小林は、主人公に小説を完成させる為にアドバイスを施すが……。
脚本の段階で「これ撮れるのかな……」という不安な部分が多くありましたが、素晴らしいキャストとスタッフの皆さんのお陰で形にすることが出来ました。本当に感謝しております。作品自体は多くの人に楽しんで貰えるように、エンターテインメント作品を目指しましたので、楽しんでいただけると幸いです。
1994年生まれ、千葉県出身。大学卒業後、NCWを経て活動を開始。前作、中編映画『My Way』が初作品。本作『Sappy』が初長編作品。