第32回映画祭TAMA CINEMA FORUM
多摩市立永山公民館(ベルブ永山)
多摩市立関戸公民館(ヴィータコミューネ)
かつて⻘春時代を過ごした街・銀平町に帰ってきた一文無しの青年・近藤(小出)は、ひょんなことから映画好きのホームレスの佐藤と、商店街の一角にある映画館・銀平スカラ座の支配人・梶原と出会い、バイトを始める。同僚のスタッフ、売れない役者やミュージシャンに映画を夢見る中学生まで、個性豊かな常連客との出会いを経て、近藤はかつての自分と向き合い始めるが...。
「愛すべき映画」があるように、「愛すべき映画館」があります。銀座並木座、高田馬場パール座、三鷹オスカーなどなど……いずれも今は存在しません。本作は,ビデオも配信もなく映画は映画館で観るものと決まっていた時代の記憶を呼び覚ましてくれます。
そもそもこの作品自体が「愛すべき」映画です。登場人物たちはみな映画愛にあふれており、『カサブランカ』をフィルムではなくプロジェクターで上映するのは味気ないと嘆く館主がいて,映画もいいけどダンスもいいよと踊る映写技師がいます。そして何より、本作はまさしくプロフェッショナルの仕事でつくられていて、映像のテンポも展開も演技も実に心地よいのです。
小出恵介さんは『風が強く吹いている』よりたくましい顔になって、でも人を惹きつけて離さない笑顔は健在です。吹越満さんや宇野祥平さんなど、出演者たちはみな実に楽しそうです。
観終わったときだれもが,今まで以上に映画が好きになっている自分に気づくことでしょう。(三)
1975年生まれ、東京都出身。武蔵野美術大学在学中より8mm映画を制作。ピンク映画、Vシネマなどで助監督を務め、『味見したい人妻たち(押入れ)』(2003年)で監督デビューしPG新人監督賞受賞。『アルプススタンドのはしの方』(20年)では第12回TAMA映画賞特別賞、第42回ヨコハマ映画祭監督賞を受賞。監督作品は100を越える。22年は『愛なのに』『女子高生に殺されたい』『ビリーバーズ』『夜、鳥たちが啼く』が公開。
1965年⽣まれ、⼤阪府出⾝。映画監督。瀬々敬久、神代⾠⺒らの助監督を経て『彗星まち』(95年)で監督デビュー。代表作は『たまもの』(2004年)『つぐない 新宿ゴールデン街の⼥』(14年)『あなたを待っています』(16年)『れいこいるか』(20年)(映画芸術ベストテン第1位)など。『苦役列⾞』(12年)の脚本や『あの頃。』(21年)の出演でも活躍。22年には監督作品が立て続けに公開され、なかでも『神田川のふたり』は高い評価を得ている。
1984年⽣まれ、東京都出⾝。2003年、雑誌「⽉刊De-View」の誌上オーディションがきっかけで事務所に所属。05年、ドラマ「ごくせん」や映画『パッチギ!』に出演し注⽬を集める。以降、ドラマでは「のだめカンタービレ」「ROOKIES」「梅ちゃん先⽣」などで活躍。映画では、『⾵が強く吹いている』(09年)で魅力的な演技により作品を支えた。ほかに『キサラギ』(07年)『愚行録』(17年)など。
1991年生まれ、宮崎県出身。舞台では「最後の卒業式」、「タッパケ」に出演。映画出演作には『血まみれスケバンチェーンソーRED』『いつか輝いていた彼女は』(いずれも2019年)、『幕が下りたら会いましょう』(21年)などがある。趣味は映画鑑賞、銭湯通いなど。ピアノでは西日本コンクールで優秀賞、剣道は初段。
1971年生まれ、和歌山県出身。映画評論家、ライター。著書に「シネマ・ガレージ~廃墟のなかの子供たち」(フィルムアート社)、編著に「21世紀/シネマX」「日本発 映画ゼロ世代」(フィルムアート社)「ゼロ年代+の映画」(河出書房新社)ほか。「週刊文春」「朝日新聞」「キネマ旬報」「メンズノンノ」「シネマトゥデイ」などで定期的に執筆中。YouTubeチャンネル「活弁シネマ倶楽部」ではMC担当。