第32回映画祭TAMA CINEMA FORUM
多摩市立永山公民館(ベルブ永山)
多摩市立関戸公民館(ヴィータコミューネ)
昭和30年代、漫画の神様・手塚治虫の住む“トキワ荘”に、彼に憧れ門下生として漫画家になることを夢見る若者たちが集まって来た。“トキワ荘”の住人寺田ヒロオ(本木)は上京して来た安孫子素雄(鈴木)と藤本弘(阿部)の世話を焼く。そして寺田を中心にそこに集う若い漫画家たち/トキワ荘の住人たちの暮らしが始まる。
本作は1996年に劇場公開され、昨年のデジタルリマスター版製作を記念に、時を経てリバイバル公開されました。再鑑賞では、理解、印象、感想が変わることは多々あります。初見では台詞が洗練され、いい意味で間のある映画でした。間は時間的な隙間。それだけではなくあえて画角を詰めず画面に空間的な隙間があるのです。そこから昭和のアパートを体感し、気が付くとその隙間に入り込んでいます。それは若き漫画家たちと同じ空気を吸っている貴重な映画体験でした。当然ですが本作は変わらず、坦々とトキワ荘での時が流れていくだけ。しかし昨年の公開では製作当時は無名だった役者たちが今や日本を代表する面々としてそこに存在し、若かりし日の才能を披露し凌ぎを削っているではないですか。まさに手塚治虫のもとに若き漫画家たちが集まったように、市川準監督のもと、若き才能ある役者たちが集まって来たことを準えていました。それは製作当時の撮影現場にいて若い役者たちが演ずる芝居に固唾を飲んで見つめている映画体験でした。市川準監督がいる撮影現場で……。(逹)
1967年生まれ、静岡県出身。映画監督、俳優。京都芸術大学映画学科教授。長編映画監督作品に『私は猫ストーカー』(2009年)、『ゲゲゲの女房』(10年)、『ジョギング渡り鳥』(16年/第8回TAMA映画賞特別賞受賞)、『ゾンからのメッセージ』(18年)、『嵐電』(19年/第11回TAMA映画賞最優秀作品賞受賞)などがある。俳優として『容疑者Xの献身』(08年)、『セトウツミ』(16年)、『あゝ、荒野』(17年)、『死刑にいたる病』『私を判ってくれない』(いずれも22年)など、多数の作品に出演している。
1963年生まれ、岡山県出身、俳優。舞台を主に活躍する。主な映画出演に『トキワ荘の青春』(96年)、『ざわざわ下北沢』(2000年)、『溺れる魚』(01年)などがある。
1962年生まれ、宮崎県出身。俳優。主な映画出演に『トキワ荘の青春』(96年)、『スワロウテイル』(96年)、『ざわざわ下北沢』(2000年)、『ピンポン』(02年)、『さくらん』(07年)、『コンフィデンスマンJP -ロマンス編‐』(19年)、『太陽は動かない』(20年)などがある。
映画監督、脚本家。主な脚本に『東京兄妹』(1995年)、『トキワ荘の青春』(96年)などがある。監督作品に、部屋をテーマにしたオムニバス映画『8つの短編』(2009年)、11月12日から長編映画監督作品『退屈なかもめたち』(パート1&2)(22年)が池袋シネマ・ロサで公開された。