第32回映画祭TAMA CINEMA FORUM
多摩市立永山公民館(ベルブ永山)
多摩市立関戸公民館(ヴィータコミューネ)
『みなさん、さようなら』原作者の久保寺健彦氏と団地団による縦横無尽トーク。多摩ニュータウンのど真ん中で、それぞれの熱い想いに触れてください。会場をグリナード永山に移しての第2部もお楽しみに!
2010年12月、新宿ロフトプラスワンのトークイベントで結成。メンバーがそれぞれの立場から、映画、マンガ、アニメなどに登場する団地について深く考察して大放談を繰り広げる。話題は団地の美観や構造に対する偏愛にとどまらず、団地登場作品の演出論から大衆文化論、果ては都市論や郊外論にまで飛び火。知恵熱必死の知的エンターテインメント集団。
渡会悟(濱田)は「一生、団地のなかだけで生きていく」と決め、中学校には通わずに自身の時間割に沿って過ごしていた。小学校の同級生は107人いて、夜には彼らの安否を気にかけながら団地内をパトロール。のちに悟は行きつけのケーキ店に就職し、青春を謳歌し、同級生との婚約も果たす。団地内に留まる彼の選択には、ある事件が影響していた。
当時は大学生の私が初めて永山団地に足を踏み入れた日、夕方の帰り道で迷子になった。もう20年も前、ちょうど多摩ニュータウンが「オールドタウン」なんて言われ始めた頃だ。団塊世代の定年退職も話題だった。
悟は団地で生きていくことを選べる環境にいたと捉えると、羨ましいと感じる面もある。ちゃんと青春していて、まっすぐで楽しそうだから。私は世代的に昭和を懐かしむことができない。小学生になる頃にベルリンの壁が取り除かれ、中学生から高校生の頃は急速なグローバル化のなかにいた。そして、生中継でWTCの倒壊を目にした。
本作の印象は、10年前の公開当時と現在では少し変わった。「さようなら」の後、「おかえりなさい」や「おひさしぶり」や「いらっしゃい」を想像できるような気がして。いまや、団地はコミュニティのあり方を投げかける最前線のひとつだ。それに、2022年に聞かされる大山倍達の言葉の妙な説得力よ。(渉)
1969年生まれ、東京都出身。立教大学法学部卒業、早稲田大学大学院日本文学研究科修士課程中退。2007年、「すべての若き野郎ども」で第1回ドラマ原作大賞選考委員特別賞を、「みなさん、さようなら」で第1回パピルス新人賞を、「ブラック・ジャック・キッド」で第19回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞をそれぞれ受賞し、デビュー。最新刊は18年の「青少年のための小説入門」。現在、次の長編を形にするべく、格闘中。
1972年生まれ。写真家/ライター。「住宅都市整理公団」(団地マニアのための団体。2000年に設立。団員は2人)の総裁。10年に佐藤大、速水健朗とともに「団地団」を結成。主な著書に「団地の見究」、「工場萌え」(石井哲との共著)、「ショッピングモ―ルから考える―ユートピア・バックヤード・未来都市」(東浩紀との共著)、「新写真論」など。
1969年生まれ。脚本家。代表作にアニメ「カウボーイビバップ」(98年)、「交響詩篇エウレカセブン」(2005年)、「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX」(02年)、「スーパー・クルックス」(21年)、ゲーム「バイオハザード リベレーションズ」シリーズなど。近作としてはアニメ映画『サイダーのように言葉が湧き上がる』(21年)、『ドラえもん のび太の宇宙小戦争 2021』(22年)、『ぼくらのよあけ』(22年/ 監督:黒川智之)などがある。
1974年生まれ。編集者・コラムニスト・ライター。映画配給会社社員、出版社の編集者を経て独立。著書に「セーラームーン世代の社会論」「ドラがたり のび太系男子と藤子・F・不二雄の時代」「ぼくたちの離婚」「「こち亀」社会論 超一級の文化史料を読み解く」「オトメゴコロスタディーズ フィクションから学ぶ現代女子事情」「映画を早送りで観る人たち ファスト映画・ネタバレ――コンテンツ消費の現在形」がある。団地団との出会いは、出版社の社員だった2011年に足を運んだ団地団トークライブの第2回。ライブ終了直後、トーク内容の書籍化をメンバーに直接もちかけ、「団地団 ~ベランダから見渡す映画論~」の企画・編集を担当(12年に刊行)。13年の独立を機に正式メンバーへと昇格した。
ライター・編集者。ラーメンからショッピングモールまであれこれ執筆。たまにテレビやラジオのコメンテイターなどもやってます。主な著書に「ラーメンと愛国」「バンド臨終図巻」など。愛車は黄色の日産マーチ・カプリオレ。
企画・シナリオ・演出担当の小沢高広、作画・演出担当の妹尾朝子からなる二人組漫画家。代表作「大東京トイボックス」シリーズ。その他「ちゃぶだいケンタ」「南国トムソーヤ」 「きょくまん」「青空ファインダーロック」「STEVES」「おもたせしました。」「アイとアイザワ」など。現在は、eスポーツの世界を描くトイボシリーズ最新作「東京トイボクシーズ」、育児エッセイマンガ「ニブンノイクジ」、街歩きマンガ「ブラガール」などを連載中。2016年「団地団」へ入団。
1980年生まれ、富山県出身。作家。大阪芸術大学映像学科卒。2008年「女による女のためのR-18文学賞」読者賞を受賞し、12年「ここは退屈迎えに来て」でデビュー。主な著書に「アズミ・ハルコは行方不明」「選んだ孤独はよい孤独」「一心同体だった」などがある。団地団への参加は13年秋から。16年に刊行した「あのこは貴族」が岨手由貴子監督によって映画化され、昨年TAMA映画賞最優秀作品賞を受賞した。最新刊は、ユーミンの荒井由実時代を描いた長編小説「すべてのことはメッセージ 小説ユーミン」。