第32回映画祭TAMA CINEMA FORUM
多摩市立永山公民館(ベルブ永山)
多摩市立関戸公民館(ヴィータコミューネ)
1945年、第二次世界大戦後のレニングラードで多くの傷病軍人を収容する病院で看護師として働くイーヤ(V・ミロシニチェンコ)。イーヤは元兵士で戦争の後遺症としてPTSDを抱えながら、パーシュカという子どもを育てている。ある日、イーヤは自身の発作によってパーシュカを失うことになる。そこに、戦友のマーシャ(V・ペレリギナ)が戦地から帰還する。
第二次世界大戦の独ソ戦時のソ連では100万人以上の女性が従軍し、男性と同様に前線で戦っていたという。本作はその独ソ戦に従軍した500名を超える女性たちの証言集「戦争は女の顔をしていない」(スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ著)を原案としたオリジナル脚本で製作された。歴史上では語られない元従軍女性たちの声がイーヤとマーシャを中心とした物語に反映されている。身体を通した生きづらさの表現やイーヤとマーシャのクィアな関係性といったさまざまな要素を織り交ぜながら、戦争によって傷ついた女性たちがいかに癒しを求め、生きたかを描く模索の物語だ。
どんな女性たちの言葉によってこの映画ができたのかを知るために、原案やその他の関連書籍を読んだ。ひとつの映画をきっかけに戦争と女性の歴史について多くのことを知る機会となった。今なお続くウクライナ侵攻の状況下、この映画が多くの人に届き、未来へと繋がっていくことを願ってやまない。(緋)
編集者・ライター。ジェンダーやフェミニズムの視点で歴史をとらえ直している。雑誌「エトセトラ」にて「ここは女を入れない国」、雑誌「群像」にて「ふたり暮らしの〈女性〉史」を連載。主宰する「花束書房」より「ウィメン・ウォリアーズ はじめて読む女戦記」(パメラ・トーラー著、西川知佐訳)を8月に出版。近著に「姐御の文化史 幕末から近代まで教科書が教えない女性史」(DU BOOKS)がある。
1992年生まれ。文筆家。文芸批評・書評を書くほか、映画やドラマ、アニメのレビュー、オタク文化やジェンダー/セクシュアリティに関連したエッセイ等も執筆。「文藝」で文芸季評を、「文學界」で新人小説月評を連載中。寄稿媒体は「文藝」「文學界」「群像」「週刊文春」「ユリイカ」など。