第32回映画祭TAMA CINEMA FORUM
多摩市立永山公民館(ベルブ永山)
多摩市立関戸公民館(ヴィータコミューネ)
パルテノン多摩 総合窓口(【B-1】~【B-8】のみお取扱い)
75歳以上は安楽死を選べる近未来の日本、夫と死別した78歳のミチ(倍賞)は、ホテルの清掃員を解雇され、住む団地からも追い立てられ「プラン75」の申請をする。一方、市役所の申請窓口で働くヒロム(磯村)は疑問を感じ、伯父を救いに走る。ミチの電話サポート瑶子(河合)はマニュアルに則ったサポートをしながら悩み、ミチはその日を迎える。
高齢社会の日本でありそうな制度であるのが怖い。現実に起きた殺害事件を背景に政府が閣議決定するまでの描き方がリアルだ。そして実施する市役所の募集キャンペーン、受付、最期を迎える施設。コロナ・ワクチン接種を受けた手順を思わせる。ひとり静かに暮らすミチの日常が愛おしい。仕事仲間との雑談、カラオケ、しかしながら失業。住む団地の取り壊し期限が迫り、プラン75をひとり部屋で決断する姿は毅然として美しい。一方、市役所でヒロムは偶然目にした書類で、自分の仕事の本質を知り、疎遠になっていた伯父が申請したことに気付き、走る。ヒロムは間に合うか。息を詰めて見守る。コールセンターで働く瑶子は、プラン75でミチを担当する。親子のように心通わせた二人に最期の日が近づく、切ない瑶子の涙。その日、キチンと部屋を片付けるミチの姿が痛々しい。施設に着いたミチ。ラストの光に満ちたシーンが良い。(勝)
NYの美術大学School of Visual Artsで写真を専攻し独学で映像作品を制作。短編『ナイアガラ』が2014年カンヌ国際映画祭シネフォンダシオン部門入選、ぴあフィルムフェスティバル グランプリなど多数受賞。18年、是枝裕和監督が総合監修を務めたオムニバス映画『十年 Ten Years Japan』の一編「PLAN75」の監督・脚本を手がける。22年、その短編から物語を再構築した長編監督作『PLAN 75』はカンヌ国際映画祭「ある視点」部門に正式出品され、新人監督に贈られるカメラドールの特別表彰を受けた。
映画ジャーナリスト。「母の友」「朝日新聞」「LEEweb版」などで執筆中。共著に「伝説の映画美術監督たち×種田陽平」(スペースシャワーネットワーク)。相米慎二監督没後20年を迎えた昨年、著・編を担当した「相米慎二 最低な日々」(ライスプレス)、「相米慎二という未来」(東京ニュース通信社)。去る9月には相米監督『光る女 デジタルリマスター修正版』(KADOKAWA)Blu-rayのブックレットをディレクション。2022年東京国際映画祭作品選定アドバイザリーボード。