第32回映画祭TAMA CINEMA FORUM
多摩市立永山公民館(ベルブ永山)
多摩市立関戸公民館(ヴィータコミューネ)
東京で暮らす晴人は祖母の死をきっかけに変わりゆく人や街、時間の変化に戸惑いを隠せずにいた。ある日、地元に住む姉の茜から祖母の家の取り壊しの連絡が入る。そしてその内容には祖母からの遺言が書き綴られていた。変わらずあると思っていた場所、変わるはずがないと信じていたもの、家に染み付く記憶とそして姉の嘘……。巣立った燕はまだ子供のまま、帰る場所を探していく。
俳優を目指す前からあった自分の空想が成長過程で得た知識を含み、作品になりました。人の記憶は「映像」として残るのか「写真」のように頭に残るのか、また自分自身を俯瞰的に見ている記憶の正体はなんなのか。脚本・演出そして映像と音楽、俳優の表現力を借りて向き合うことができました。自分の答えは出たと思います。ここからは観てくださる方を通して作品の行く末を見守りたいと思います。
1992年生まれ、石川県出身。2012年New York Film Academy修了。帰国後は地元・石川県の劇団に所属し、14年上京。現在、映画、舞台を中心に俳優活動を行っている。主演作にあたる映画『そんな別れ。』では数多くの賞を受賞し、山形国際ムービーフェスティバル2021では映画『ナナサン』にて最優秀俳優賞(船越英一郎賞)を受賞。今作品が初の監督作品となる。
兄の雅信からの家庭内暴力に耐える高校生の悠晟は、人間の性格を決定するのは遺伝だと考え、家族に流れる血液を嫌悪する。そして自分自身もいつかは雅信のような人間になってしまうという運命に悩む。ある日、塾で出会った男子生徒の水瀬と仲良くなるが、彼の容姿や生活に憧れを抱くあまり、次第に異常な行動を繰り返すようになる。
このような素晴らしい映画祭で上映の機会をいただき、誠に光栄に思います。本作は半自伝的作品として製作しましたが、実際に起こった出来事に忠実に描くのではなく、あくまでエンタメ性と分かりやすさを追求して脚本を書きました。ご覧になる観客の皆さまに強烈な刺激と、そして何か新しいものを提供できればと願っています。
2002年生まれ、東京都出身。現在は青山学院大学で物理学を専攻している。幼いころから映画作りに興味があり、大学に入ると同時に映画サークルに入部する。映画製作や脚本術などの知識は書籍を参考に独学で学ぶ。本作『瀉血』が初監督作品であり、第44回ぴあフィルムフェスティバルにて映画ファン賞を受賞した。
片田舎のとある団地で、祖母と母との母娘3世代で暮らしてきた照子。高校卒業後は地元のスーパーで母と一緒に働く毎日を送っていたが、団地の取り壊しをきっかけに、東京の大学へ進学することに。ある日、照子の元に長らく音信不通だった父親から突然の連絡が。この街に別れを告げゆく照子と、新しい住まいに身を移す母と祖母。立ち退きの日が迫るなか、母娘3世代の綻びは日に日に大きくなってゆく―。
親元を離れて暮らすようになり、家族として過ごす時間は有限であると気づいたところから、家族関係の難しさと温かさについて描きたいと思い、物語の着想を得ました。自分自身の家族を見つめることからスタートした制作でしたが、完成したものには、普遍的な家族関係、人間関係、そして社会のありようが映っていると思っています。登場人物たちの温度ある生活を通して、一瞬でも、観てくださる方の人生とリンクできましたら幸いです。
2000年生まれ、奈良県出身。高校時代、部活中に河瀨直美監督の映画にエキストラとして出演したことをきっかけに、映画制作に興味を持つ。卒業後、東放学園映画専門学校に入学。本作が2年次卒業制作となる。
久納小春(26歳)は転職活動中である。小春には幼少期に事故で亡くした母に代わり、小春の世話まで担ってきた兄太知(29歳)がいる。そんな太知がある日、家族の前から姿を消した。小春は太知の婚約者亜紀(25歳)と共に太知を探しに向かう。
本作『あいつをよろしく』は、現代社会において、私たちがつい見失ってしまいがちな“繋がりの大切さ”を描いた作品です。本作を通じて、少しでも他者と交わる手立てをみつけ、改めて“繋がりの大切さ”に気づくきっかけとなることを願います。家族、友人、恋人……皆さんにとっての身近な存在を想像しながらご覧ください。よろしくお願いします。
1996年生まれ、東京都出身。東京藝術大学美術学部へ入学後、自主映画制作を中心に活動する。2020年東京藝術大学大学院映像研究科映画専攻監督領域へ入学、諏訪敦彦、黒沢清に師事する。本作は同大学院の修了制作作品として制作した。その他監督作品に『moratorium』(18年)、『ホットミルクみたいな話』(19年)などがある。
漁協の合併を控えた港町。視力を失った西村芳則(木村)は、かつて同じ通りの家から通学した同級生が町に戻ってきたことを聞く。同級生で役者をする大畑碧(高見)は自身の理想と現実の狭間で憂鬱な時を過ごしている。再会する2人。町にはゆっくりと陽が落ち、そこで暮らす人々はそれぞれの帰路に就く。窮屈で、美しい、その町を眺める2人は、その景色にそれぞれの記憶と想像を重ねる。
ひょんなきっかけで始めた映画作りですが、まるで未知の言語を覚えるような体験で日々ワクワクしています。この物語は、他者の身体感覚に対する好奇心が強まっていたことを起点に考え始めました。むわっとした空気の映画です。楽しんでいただけますととても嬉しいです。
1989年生まれ、兵庫県出身。2019年から映画美学校で映画制作を学ぶ。今作が初長編作品。
「自分はゲイかも」と玲衣は友人の健斗にカミングアウトされる。2020年4月コロナ禍で緊急事態宣言が発令され、生活の変化を強いられながらも大学生活を送るろう者と聴者の4人の姿を描く。彼らの甘くて辛い想いが交差した複雑な四角関係を綴るヒューマンドラマ。
コロナ禍の心境の変化を形に残すこと、ろう者の日本手話と聴者の日本語という言語の違いや、ろう者特有の文化、またろう者の言語的少数者とセクシュアルマイノリティの交差性を織り交ぜ、描いた作品にしました。ろう者役はろう者、聴者役は聴者が演じることが当たり前になるようにという思いを込めています。エンディングは手話ポエムも取り入れ、最後までろう者と聴者共に楽しんでいただければと思っています。
1988年生まれ、群馬県出身。第一言語は日本語と異なる言語の日本手話でろう者。2018年、映画『虹色の朝が来るまで』を制作、19年11月に劇場一般公開。21年『ジンジャーミルク』で映文連アワード2022パーソナル・コミュニケーション部門優秀賞受賞。日本財団電話リレーサービスCM監督作品『できることを、あきらめない。』など。
1986年生まれ、奈良県出身。2012年、CO2(シネアスト・オーガニゼーション・大阪)の企画募集で選出され、『Dressing UP』を監督。第14回TAMA NEW WAVEコンペティションにてグランプリと最優秀主演女優賞を獲得した後、2015年に全国の劇場で上映され、第25回日本映画プロフェッショナル大賞の新人監督賞を受賞した。その後はオムニバス映画への参加や舞台作品などを経て、長編第2作『よだかの片想い』(21年)を監督。東京国際映画祭のアジアの未来部門に選出される。
1977年生まれ、三重県出身。ポレポレ東中野スタッフ。自主映画の映画祭では予備審査員を長年務め、様々な才能を発掘。作り手と共に劇場公開や上映会を企画し、数々の自主映画の傑作を世に送り出す。はじめての自主興行では宣伝のサポートも務める。2019年11月からはspace&cafeポレポレ坐で映画館の興行とは別の形で自主映画を上映していく企画「KANGEKI 間隙」を始める。自主映画ならではの風通しのいい表現方法を日々探求している。