第32回映画祭TAMA CINEMA FORUM
多摩市立永山公民館(ベルブ永山)
多摩市立関戸公民館(ヴィータコミューネ)
先の戦争の反省を踏まえ、日本の教育は常に政治と切り離されてきたが、2006年に教育基本法の改変により、戦後初めて、いわゆる“愛国心条項”が盛り込まれ、教科書検定制度が目に見えない力を増していく。教育と政治の関係を見つめながら、歴史教科書をめぐる攻防を軸に映し出していくドキュメンタリー。
この作品を最初に観たとき、大学の教育学で学んだルイ・アラゴンの詩の一節が頭に浮かびました。「教えるとは共に未来を語ること、学ぶとは心に誠実を刻むこと」。
軍国主義へと流れた戦前の反省から、戦後の教育は政治と常に一線を画してきましたが、2006年に教育基本法が改変され、「愛国心」条項が戦後初めて盛り込まれました。14年にその基準が見直されて以降、目に見えない力を増していく教科書検定制度により、政治介入ともいえる状況のなかで繰り広げられる出版社と執筆者の攻防はいま現在も続いています。
採用される教科書によって、子どもたちはどのような教育を受け、どのように育っていくのか。教科書は、教育はいったい誰のものなのか。教えるとは? 学ぶとは?……。
衝撃的な事件から4か月、この作品を今年の映画祭で上映することの意味も含め、監督が見続けた“教育現場”をともに確かめ、考えるきっかけにしたい作品です。(WB)
兵庫県出身。1987年毎日放送入社。報道記者などを経て 2015年からドキュメンタリー担当ディレクター。企画、担当した主な番組に「映像'17沖縄 さまよう木霊~基地反対運動の素顔~」(17 年)で第72回文化庁芸術祭優秀賞など、「映像'17教育と愛国~教科書でいま何が起きているのか~」(17年)で第55回ギャラクシー賞テレビ部門大賞など、「映像'18バッシング~その発信源の背後に何が~」で第39回「地方の時代」映像祭優秀賞。個人として「放送ウーマン賞2018」を受賞。映画『教育と愛国』は、第65回日本ジャーナリスト会議(JCJ)大賞受賞。著書に「教育と愛国-誰が教室を窒息させるのか」(岩波書店)、「何が記者を殺すのか 大阪発ドキュメンタリーの現場から」(集英社新書)。
東京都出身。専門は憲法と芸術法。博士(法学・早稲田大学)。2000年より武蔵野美術大学で表現者のための法学および憲法を担当。「表現の自由」を中心とした法ルール、文化芸術に関連する法律分野、人格権、文化的衝突が民主過程や人権保障に影響を及ぼす「文化戦争」問題を研究対象にしている。著書に「文化戦争と憲法理論」(06年)、「表現者のための憲法入門」(15年)、「合格水準 教職のための憲法」(共著・17年)、「「表現の自由」の明日へ」(18年)、「映画で学ぶ憲法Ⅱ」(編著、21年)など。