第26回映画祭TAMA CINEMA FORUM
県の選抜チーム入りが決まった生徒・桐島が、バレー部を辞める。チームメイト、親友、彼女。繋がっていたはずの誰一人として聞いていた者はなく、そのニュースを耳にする。万能の桐島が、なぜ?心をかき乱されたまま、連中は校舎の屋上に彼を見つけて駆けつける。そこで鉢合わせたのは、見下された存在の映画部だった。
どの人が桐島なのか、なぜ部活を辞めてしまうのか。いつになったらわかるのか。もどかしさが厚塗りされながら、物語は進んでいく。「高校の頃って、こういうことあるよね」と、遠い日を懐かしがりたい気持ちも、いつまでも着地させてもらえない。
運動部、文化部、クラス、学年、など、幾種類もの囲いがある高校生活。互いの垣根は低くて外から見るのは簡単なわりに、出入りする扉は重たい。この映画の登場人物たちから感じたことだ。彼、彼女らの言葉や表情は、桐島を知るための手がかりとしてみない方が良い。なにに苛立っているのか、伝わってくるのを待って欲しい。すると、雲をつかむような高校生の切ない心理が、クライマックスで実像を現してくれる。好きなことに打ち込むこと、自分を信じて戦うこと。映画部のゾンビ映画に、高校生のリアリティはあった。(か)
創部1年目にして東京都大会優勝を果たした、綾瀬千早(広瀬)の競技かるた部のその後を描く。「上の句」の爽快感はそのままに、クイーンの若宮詩暢(松岡)も絡み合い、物語は進行していく。
観終わった後の爽快感がたまらない。かるた馬鹿の千早と彼女を取り巻く仲間たちのストーリー……と言ってしまうとなんだか薄っぺらいが、こんなに夢中になれることがあるなんてと嫉妬すら感じる。青春のキラキラが本当に眩しい。羨ましい。日本文化最高。
団体戦を通じて、仲間の大切さや絆を描いた『上の句』。坂道を駆け上るようなテンポで、観ている方も走っているような爽やかさに包まれる。それに対して、個人戦に向けてかるたへの感情や繊細な心の動きを丹念に描いた『下の句』。壁をよじ登るような苦しさを越え、クイーンに挑んでいく。凛としたクイーンは指先まで美しくて見惚れてしまうが、それでもやっぱり根本は千早と同じかるた馬鹿なのだろう。美しさと格好良さのなかに垣間見える抜け感のバランスもよく、始終目が離せない。作品にも感動させられたが、作品を通じて自分の部活時代を思い出して涙した人も多いのではないかと思う。それと同時に、何かに打ち込むことの素晴らしさ、不可能に立ち向かう勇気、忘れてしまっていた大切な何かを思い出させてくれる。(音)
1995年生まれ、東京都出身。2008年、テレビ東京『おはスタ』のおはガールとして本格的にデビュー。『桐島、部活やめるってよ』(12年)で一躍注目され、NHK連続テレビ小説「あまちゃん」(13年)で人気を得る。そのほか、『リトル・フォレスト 夏・秋』(14年)、『リトル・フォレスト 冬・春』『サムライフ』(共に15年)などに出演。本年は『猫なんかよんでもこない。』『ちはやふる -下の句-』に出演する一方、声優として『ポケモン・ザ・ムービーXY&Z「ボルケニオンと機巧(からくり)のマギアナ」』、『聲の形』に出演している。
1970年生まれ、山梨県出身。94年日本テレビ入社。営業職を経て2003年に念願の映画事業部異動。『デスノート』シリーズ(06年~)、『GANTZ』シリーズ(11年)、『桐島、部活やめるってよ』(12年)ほか、ヒット作・話題作を多数手掛ける。最新作は現在公開中の『デスノートLight up the NEW world』(16年)。12月10日公開の『海賊とよばれた男』(16年)が控えている。