第26回映画祭TAMA CINEMA FORUM
ジェフ(T・コートネイ)とケイト(C・ランプリング)は45年連れ添ったおしどり夫婦である。週末に結婚45周年記念パーティを控えた月曜日、ジェフのもとに山で落命した昔の恋人カチャについての1通の手紙が届く。ケイトはジェフとカチャとの関係を知るにつれ、またジェフの心がカチャに占められていく様子を見て不安に、孤独に苛まれてゆく。
この映画は闇にスライドを見る音で始まる。ジェフの秘密から始まるのだが観客はまだその意味を知らず、仲睦まじい夫婦としての生活を見ていくのだ。昔の恋人カチャの遺体が発見されたことで、ジェフの記憶は過去に遡り、次第に取り憑かれていく。初めは寄り添う気持ちのケイトも、あからさまなカチャへの思いを語るジェフに違和感を覚えていく。2人で決めた禁煙もジェフの方から破り、ケイトも喫煙を始める。また、自然にカチャの話をするジェフに自然ではいられないケイト。
弱冠42歳のアンドリュー・ヘイ監督は2人の間のさざなみが大きくなっていく様子や男女の違いを丁寧に描いていく。音楽も2人の思い出のポップスとケイトの弾くピアノの曲だけである。結婚45周年を祝うパーティでの2人の演技、特にシャーロット・ランプリングの表情は圧巻である。
永く寄り添ってきた夫婦にも、そう出来なかった夫婦にも、また若い人たちにも観てほしい。夫婦とは? 孤独とは? さあて愛と寄り添いについては言うまい。(寺)
1973年イギリス生まれ。ハリウッドに渡り、『グラディエーター』(2000年)や『ブラックホーク・ダウン』(01年)の編集補佐を務める。初監督の長編映画『Greek Pete』(09年)はロンドン・レズビアン&ゲイ映画祭で初上映。続く『ウィークエンド』(11年)で英国インディペンデント映画賞、イブニング・スタンダード・シアター賞の最優秀脚本賞を含む多数の賞を受賞。日本の東京国際レズビアン&ゲイ映画祭(現「レインボー・リール東京」)でも上映された。アメリカのケーブルテレビ局HBO製作ドラマ「LOOKING」(14年)ではエグゼクティブ・プロデューサーを務めた。2017年には、ファッションデザイナーの故アレキサンダー・マックイーンの伝記映画を監督することが予定されている。
1946年生まれ、イギリス・エセックス州出身。オリンピック金メダリストで軍人の父親、画家の母親のもとに生まれる。フランスとイギリスで教育を受けたのち、ロンドンでスカウトされモデル活動スタート。『ナック』(65年)で映画デビュー。その翌年に公開された『ジョージー・ガール』で変わり者の女性を演じ、次世代スターとして取り上げられる。以後、イタリアの巨匠ルキノ・ヴィスコンティ監督『地獄に堕ちた勇者ども』(69年)、女流監督リリアーナ・カヴァーニ『愛の嵐』(73年)、ウディ・アレン監督『スターダスト・メモリー』(80年)、シドニー・ルメット監督『評決』(82年)、大島渚監督『マックス、モン・アムール』(86年)、アラン・パーカー監督『エンゼル・ハート』(87年)など堪能な語学力を活かしてヨーロッパ、ハリウッドで活躍する。その後しばらくスクリーンから遠ざかっていたが、フランスの異才フランソワ・オゾン監督の『まぼろし』(2001年)、『スイミング・プール』(03年)で復活、圧倒的な存在感を示した。本作品での演技が新たな代表作の誕生と高く評価され、50年に及ぶキャリアのなか、第88回アカデミー賞®主演女優賞に初ノミネートされ、第65回ベルリン国際映画祭コンペティション部門では銀熊賞女優賞を共演のトム・コートネイの男優賞とともにW受賞。
1937年生まれ、イギリス・ヨークシャー州出身。王立演劇学校で学び、60年に舞台デビュー。トニー・リチャードソン監督『長距離ランナーの孤独』(62年)に主演し、英国アカデミー賞新人賞を受賞。『ドクトル・ジバゴ』(65年)でアカデミー賞®助演男優賞受賞、『ドレッサー』(83年)で同主演男優賞ノミネートなど演技が高く評価されている。主に舞台を中心に活動、トニー賞にも2度ノミネートされる。2001年には40年間にわたる映画・舞台での活躍が評価され、ナイトの称号が贈られた。本作で第65回ベルリン国際映画祭コンペティション部門銀熊賞男優賞を受賞。
1. My Autumn’s Done Come/リー・ヘイゼルウッド(1966)
2. Remember (Walking In The Sand)/ザ・シャングリラズ(1964)
3. 二人だけのデート(I Only Want To Be With You)/ダスティ・スプリングフィールド(1963)
4. Stagger Lee/ロイド・プライス(1959)
5. Tell It Like It Is/アーロン・ネヴィル(1966)
6. いつも心に太陽を(To Sir With Love)/ルル(1967)
7. ヤング・ガール(Young Girl)/ゲイリー・パケット & ユニオン・ギャップ(1968)
8. ハッピー・トゥゲザー(Happy Together)/タートルズ(1967)
9. 煙が目にしみる(Smoke Gets In Your Eyes)/プラターズ(1958)
10. ゴー・ナウ!(Go Now!)/ザ・ムーディー・ブルース(1964)
11. I Don’t Want To Set The World On Fire/インク・スポッツ(1941)
12. スザンヌ(Suzanne)/レナード・ コーエン(1967)
13. The Old Man’s Back Again/スコット・ウォーカー(1969)