第26回映画祭TAMA CINEMA FORUM
8年間も新作が完成していないドキュメンタリー映画監督のジョシュ(B・スティラー)と妻のコーネリア(N・ワッツ)。40代になり、人生にも夫婦にも何かが欠けていると感じるようになったある日、ジェイミー(A・ドライバー)とダービー(A・サイフリッド)という20代のカップルと知り合う。自由でクリエイティブに生きる若い彼らに刺激を受けた2人は、再び活力を取り戻していくが……。
観た友人たちから「相当に痛い話だ」と聞いていたので覚悟して観た。友人たちも私もノア・バームバックと同世代。いつまでも若いつもりの売れない映画監督とその妻の話だなんて、どこかで聞いたような話じゃないか。
観たあとの感想。確かに痛くて苦い話だったし、若いカップルには腹も立ったが、なるべくしてこうなっているから自業自得とも言える。誰の味方もできないと思った。もちろん、心情的には主人公カップルに寄り添う。それでいて、観ている間中彼らと自分の違うところを探していた。「こんなに見栄をはったりしない」(だから、大丈夫)「こんな若いやつら別にうらやましくない」(だから、大丈夫)裏返せばやっぱりリアルだった。
いくつか発見もあった。ニューヨークも東京も40代が抱える問題は大差ないこと。アメリカではドキュメンタリーで成功する監督もいるってこと。
それにしても後からじわじわ効いてくる映画だ。今後フレンドリーに近づいて来る若いカップルなどいたら間違いなく警戒してしまうだろう。(黒)
1986年生まれ、奈良県出身。大阪美術専門学校で映像制作を学び、2010年に短編『カノジョは大丈夫』を監督。11年、CO2に提出した企画が通り『Dressing Up』を監督、13年に第14回TAMA NEW WAVEグランプリを受賞し、15年に劇場公開。第25回日本映画プロフェッショナル大賞新人監督賞を受賞。14年、『激写!カジレナ熱愛中!』を監督。
1968年生まれ、東京都出身。86年よりモデル活動を始め、88年に映画『バカヤロー! 私、怒ってます』で映画初出演。以後さまざまな作品に出演し、99年『M/OTHER』で第14回高崎映画祭にて主演女優賞を受賞。さらに2013年、『チチを撮りに』で第55回アジア太平洋映画祭にて最優秀助演女優賞など多数の賞を受賞。若手インディーズ系映画作品に意欲的に参加しており、第17回TAMA NEW WAVE「ある視点」部門で上映される『めぐりゆく。』にも出演している。
1982年生まれ、青森県出身。映画酒場編集室として「映画横丁」編集人をつとめる。出版社勤務の後、現在はフリーランスで書籍や映画パンフレットの編集、また映画公開にあわせた選書フェアの企画などを手がける。2013年に個人冊子「映画酒場」を創刊、現在2号まで発売中。15年に創刊の「映画横丁」は今夏3号を発行。フリーマガジン「メトロポリターナ」でコラム「映画でぶらぶら」を連載中。
いつもの通り道からふっと横道にそれるように、見知らぬ街の横丁で酒場をはしごするようにゆったりと映画を楽しみたい。そんな人たちに贈る小さな映画雑誌。毎号お酒に関連したおすすめの映画を紹介しています。最新号の特集は「ビールの美味しい季節」。