第26回映画祭TAMA CINEMA FORUM
浅草オペラ出身で、数々の映画に主演した不世出の喜劇役者、榎本健一。この作品は、エノケンが最も脂の乗っていた時期のもので、防弾チョッキ製造会社で犬猿の仲である2人の会社員が、何事にかけても張り合う姿を抱腹絶倒の喜劇に仕立てたものである。
稲田(榎本)と三田(如月)は隣同士の家に住み、同じ会社の社員同士だがまったく気が合わない。2人が勤める防弾チョッキ株式会社に向かう時も、会社に着いても、どこでもいつでも喧嘩をする2人。お互い意地を張っている様子が面白おかしい。榎本健一のころころ変わる表情や仕草、台詞の言い回しがとても魅力的であり、「喜劇王」の名にふさわしい。
ライバル社員に榎本の実家のせんべい卸屋で使用人だったという経歴を持つ如月寛多、会社の課長に浅草オペラ時代の師匠だった柳田貞一というお馴染みを配している。
監督は怪談映画の巨匠・中川信夫。喜劇特有のリズム感とタイミングの良さは、人を笑わせ、恐怖を人に感じさせることにも通じているのだろう。(藤)
雑誌「平凡」連載の中野実の小説をもとに、当時人気沸騰のひばり・チエミ・いづみの3人娘が主演した元祖アイドル映画とも呼ばれるミュージカル調の娯楽作品。
東京の高校生であるルリ(美空)と由美(江利)が修学旅行で京都を訪れ、ひょんなことから舞妓の雛菊(雪村)と仲良くなる。やがて東京に戻った2人のもとに雛菊が上京するのだが、2人は雛菊から、好きでもない社長を旦那として迎え、芸妓となる前に、お座敷で2度ほど会った「西北大学の斎藤」なる大学生に会いたいと人探しを頼まれる。2人が協力して探した末に彼が伊豆にいることがわかり3人は向かおうとするが……。
当時としては珍しいカラー映画が日本でも増え始め、この作品では黄=美空ひばり、赤=江利チエミ、青=雪村いづみとして、彼女らのイメージカラーが決められている。3人の人物像をわかりやすく表現しており、効果的に散りばめた色彩の工夫が特徴的に使われている。軽快な音楽に3人娘ののびやかな歌声と色鮮やかな画面にジャンケンポン♪と楽しい。(藤)