第34回映画祭TAMA CINEMA FORUM
永山公民館(多摩市公民館)
関戸公民館(多摩市公民館)
パルテノン多摩総合案内窓口
宮城県の小さな港町、五十嵐家に男の子が生まれた。祖父母、両親は、“大”と名付けて誕生を喜ぶ。ほかの家庭と少しだけ違っていたのは、両親の耳がきこえないこと。幼い大にとっては、大好きな母の“通訳”をすることも“ふつう”の楽しい日常だった。しかし次第に、周りから特別視されることに戸惑い、苛立ち、母の明るささえ疎ましくなる。心を持て余したまま20歳になり、逃げるように東京へ旅立つ大だったが・・・。
映画が公開されたころ、難聴の友人から連絡がありました。呉美保監督が出演していたテレビ番組で映画のワンシーンが流れたのを観て、現実的でちょっと心が痛んだけれども、ろう者が演じることで実際の世界を知ってもらえることや監督のお話から丁寧に作品を作り上げていることが伝わってきたということでした。
この映画は親子の普遍的な愛情を描いたコーダである主人公の成長譚といえますが、特筆すべきは「きこえない」役者さんたちによって手話という言語の世界がリアルに、そして友人の言うとおり丁寧に描かれている点です。両親だけでなく、他のろう者との関わりのなかで新しい気づきを得ていく主人公の姿は、映画だけの世界ではない。私たちのすぐそばにも、きこえない人がいるかもしれないということを気づかせてくれるのです。(WB)
1977年生まれ、三重県出身。大阪芸術大学卒業後、スクリプターとして映画制作に携わり、初の長編脚本『酒井家のしあわせ』がサンダンス・NHK国際映像作家賞を受賞、2006年同作で映画監督デビュー。『オカンの嫁入り』(10)で新藤兼人賞金賞を受賞。『そこのみにて光輝く』(14)でモントリオール世界映画祭ワールドコンぺティション部門最優秀監督賞を受賞。続く『きみはいい子』(15)でモスクワ国際映画祭にて最優秀アジア映画賞、および第7回TAMA映画賞最優秀作品賞を受賞。『ぼくが生きてる、ふたつの世界』は9年ぶりの長編作品となる。
1970年生まれ 北海道千歳市出身。ろう者。99年に公開された映画『アイ・ラヴ・ユー』で日本初のろう者(先天性ろう=生まれつき聞こえない)の主演俳優として、オーディションで選ばれ、俳優デビューする。同作で第54回毎日映画コンクール「スポニチグランプリ新人賞」、第16回山路ふみ子映画賞「山路ふみ子福祉賞」を受賞。
兵庫県生まれ。映画解説者。「スティーヴン・スピルバーグ 映画の子」(KAWADEムック)「文藝別冊 クリストファー・ノーラン 増補新版」(河出書房新社)「森田芳光全映画」(リトルモア)などに映画評を寄稿。その他、WOWOW「映画工房」をはじめ、TV、ラジオ、雑誌、新聞、WEB、Podcastで映画解説を展開。さらに映画の枠を超えて、若年層の育成のため「偶然の学校」や「あしたメディア」でも活動中。