第34回映画祭TAMA CINEMA FORUM
永山公民館(多摩市公民館)
関戸公民館(多摩市公民館)
裏稼業で働く孤独な辰巳(遠藤)は、ある日元恋人・京子(龜田)の殺害現場に遭遇する。一緒にいた京子の妹・葵(森田)を連れて、命からがら逃げる辰巳。片や、最愛の家族を失い、復讐を誓う葵は、京子殺害の犯人を追う。生意気な葵と反目し合いながらも復讐の旅に同行することになった辰巳は、彼女に協力するうち、ある感情が芽生えていく。
『ケンとカズ』で数々の映画賞を受賞した小路紘史監督の最新作。実に8年ぶりの新作となる本作は、「前代未聞のジャパニーズ・ノワール」の謳い文句に違わない仕上がりとなっている。
カネ、クスリ、暴力。前半は闇社会に生きる登場人物たちのまさに<THEノワール>といったあり方がテンポ良く描かれているが、後半にいくにつれグッと湿度が上がっていく。特に辰巳と葵それぞれの「情」の変化が物語の、─決して目新しいわけではない筋書きの─ラストを、忘れ得ないものにしている。
それを可能にしているのはやはり、登場人物たちの<顔>であると思う。辰巳の横顔から始まり、<顔>のクローズアップを多用した演出は、登場人物たちの台詞にはない感情の動きを─時には台詞より雄弁に─映し出す。こだわり抜いたその演出のため、1年後に再撮影や追加撮影を行ったシーンもあるとのこと。是非その熱量を感じていただきたい。(米)
1986年生まれ、広島県出身。短編映画『ケンとカズ』が、SKIPシティ国際Dシネマ映画祭 2011にて奨励賞を受賞。ロッテルダム国際映画祭、リスボン国際インディペンデント映画祭など4カ国で上映される。 2016年に『ケンとカズ』を長編版としてリメイク、東京国際映画祭日本映画スプラッシュ部門作品賞、新藤兼人賞・日本映画監督新人賞など、数々の新人監督賞を受賞。本作『辰巳』は8年ぶりの監督作となる。
1987年生まれ、神奈川県出身。2000年に映画『ジュブナイル』(山崎貴監督)で主人公の少年時代を演じ、映画デビュー。近年の主な出演映画として『HiGH&LOW THE MOVIE』全シリーズ(16~17年)、『それでも、僕は夢を見る』(18年)、『無頼』(20年)などがあり、22年には第47回セザール賞オリジナル脚本賞を受賞した『ONODA一万夜を越えて』(21年、アルチュール・アラリ監督)に主演した。以降、『の方へ、流れる』(22年)や『ゴジラ-1.0』(23年)など、多彩な作品に出演。
2000年生まれ、東京都出身。幼少の頃より子役として活動をスタート。『ソロモンの偽証 』(15年)など多数の出演を経て、『アイスと雨音』(18年)で映画初主演を務める。そのほか『朝が来る』『タイトル、拒絶』(いずれも20年)『わたし達はおとな』(22年)『レジェンド &バタフライ』『愚鈍の微笑み』『正欲』(いずれも23年)などに出演。『わたしの見ている世界が全て』(23年)でマドリード国際映画祭2022外国語映画部門の主演女優賞を受賞した。
1983年生まれ、東京都出身。劇団オーストラ・マコンドーに在籍。2012年に『とりはだ』(三木康一郎監督)で映画デビュー。その後、19年と21年にNetflixで制作・配信されたドラマ「全裸監督」シリーズに出演。22年には、『大事なことほど小声でささやく』(横尾初喜監督)で主演を務める。主な出演映画として『ヒメアノ〜ル』(16年)、『犬猿』(18年)、『ブルーアワーにぶっ飛ばす』(19年)、『騙し絵の牙』(21年)、『マッチング』(24年)など多数ある。
1981年生まれ、高知県出身。2010年に舞台演出家デビュー、オーストラ・マコンドーを結成。14年に劇団化。同劇団には、本作に出演している後藤剛範のほか、カトウシンスケ、清水みさと、豪起が所属。現在までに海外戯曲、日本の古典や自身のオリジナル作品を含め、さまざまなジャンルの舞台作品を100本以上演出。22年には、初の映画監督作品『どうしようもない僕のちっぽけな世界は、』が公開。『辰巳』が初めての映画出演になる。