第34回映画祭TAMA CINEMA FORUM
永山公民館(多摩市公民館)
関戸公民館(多摩市公民館)
古びた電気店で働く浦瀬夏生(小関)。趣味の絵を描くために、給料の大半を画材につぎ込んでしまう夏生は貯金がまったくなかった。一方、長年連れ添った夫を半年前に亡くしたばかりの倉持佳乃(根岸)は、ひとり暮らしとなった家をルームシェアすると言い出す。それを耳にした電気店主の松田(古舘)が「最適任者」として夏生を佳乃に紹介する。こうして、19歳の夏生と60歳の佳乃の奇妙な共同生活が始まった。
本作では、夢を心に秘めた19歳の青年が、夫に先立たれた60歳の女性との奇妙な共同生活を通して、閉ざしていた心を溶かしていく様が描かれています。静かで淡々と、でもどこかクスッと笑える描写が散りばめられていて、どの登場人物たちにも愛着が湧きます。
物語の序盤、夏生は「はい」だけで会話することが多く、なんとも言えない心の内や19歳という微妙な年齢を感じます。それにしても「はい」だけで、これだけちがった意味を表現できるのか。私のお気に入りの「はい」は、松田の「うちの給料は少ないよ」に対するもの。2人の心地よい関係性がとても出ています。
佳乃さんの話す言葉は、夏生だけでなく観ている者も受け入れてもらえたような包容力があります。そしてラスト。初めて劇場で観てから9年経ちますが、ずっと心に残っています。(未)
鈴木翔(小関)は激怒した。必ず、かの邪知暴虐の反社会組織のリーダー、沖嶋(黒田)を倒さねばならぬと決意した。しかし、翔には愛する妹、莉奈(新谷)の結婚式がある……。そこで、日付が変わるまでに戻ってくることを条件に、唯一無二の親友・世良(前原)を沖嶋に人質として差し出し、式場へと走る! 葛藤する翔は世良との友情を守り、沖嶋のもとへと戻るのか!?
物語がトップスピードで始まった! あっという間に作品の世界に飲み込まれて、気付けば最終地点に到着している。まさに翔と一緒に、短くも長い時間を駆け抜けているようでした。本作は、文豪・太宰治の「走れメロス」をモチーフに設定を現代に置き換え、コメディー風にアレンジした作品。小関さんは、中川龍太郎監督と撮影前から意見交換を重ね、現場でも自らのアイデアを出して作り上げました。アイデアのひとつである「仕草」が作中のアクセントになって生きています。
また独特の世界観も魅力のひとつ! これはどこの、なんの集まりなんだろうか……と思ってしまう結婚式の様子が、なんとも言えないハイテンションさとスピード感に溢れていて、翔の帰りを待つ世良のいる空間との大きなギャップになっていました。さらに、結婚式にいる翔と世良が語る翔の様子がかけ離れている“掴めなさ”も面白い。それは作品によって全く違う面を表現している小関さんの魅力が表されているようにも感じました。(未)
1995年生まれ、東京都出身。子役として芸能活動をスタート。その後、ドラマや映画、ミュージカル・舞台に出演。 主な出演作に、TVドラマ「来世ではちゃんとします」シリーズ(2020~23年)、舞台「キングダム」「ジャンヌ・ダルク」(ともに23年)など。24年は映画『恋わずらいのエリー』、TVドラマ「素晴らしき哉、先生!」「あのクズを殴ってやりたいんだ」、ミュージカル「ロミオ&ジュリエット」に出演。写真展「LIKES」を開催するなど、活躍の幅を広げている。
映画監督、脚本家。『四月の永い夢』(2017年)がモスクワ国際映画祭にて、国際映画批評家連盟賞・ロシア映画批評家連盟特別表彰を受賞。『わたしは光をにぎっている』(19年)がモスクワ国際映画祭に特別招待。『静かな雨』(20年)が東京フィルメックスにて観客賞。愛知県観光動画『風になって、遊ぼう。〜ジブリパークのある愛知〜』を制作。『やがて海へと届く』(22年)がウディネ・ファー・イースト映画祭に選出。『MY (K)NIGHT マイ・ナイト』(23年)が東京国際映画祭ガラ・セレクション部門に正式招待。