第34回映画祭TAMA CINEMA FORUM
男子部しかなかったボート競技の女子部を作り、知識も経験もないままガムシャラに練習していく。制作のアルタミラピクチャーズはこの後に『ウォーターボーイズ』や『スウィングガールズ』といった青春映画のヒット作を次々と送り出すが、本作がその礎を築いたと言える。
言わずと知れた田中麗奈の映画初主演作であり、主人公のひたむきさと鬱屈とした思いを等身大で演じている。また、今回改めて作品を鑑賞してみて、母と死別したチームメイトの料理しながらの訥々とした語りや控えめな佇まいが妙に印象に残った。
舞台が愛媛の松山という記憶はあったが、時代が50年近く前の設定ということに気づいて驚いた。公開された90年代の輝きが未だに色褪せず胸に響く一本。今年の10月にアニメ映画として再映像化され、現代劇として描かれる。執筆時点では公開前だが、本作と見比べてみるのも面白いかもしれない。(理)
のっけから「多摩市黒川」の老人ホームが舞台ということでニヤリ。老い先の短さを感じた老人たちが一世一代の大犯罪に乗り出すのだからたまらない。特殊な技能もない女好きや大ぼら吹きといった面々がくたびれた心身に鞭打って無謀な計画を進め、二転三転するのに思わず手に汗を握ってしまった。
老人のケイパーものといえばモーガン・フリーマンらが主演した『ジーサンズ はじめての強盗』(2017年)や『ナイト ミュージアム』(2007年)を思い浮かべる。どちらも洋画作品で、前者は自分たちを蔑ろにした大企業への復讐、後者は魔法の石板で若さを取り戻すといった目的を持っていたが、邦画である本作は高齢社会に直面している日本らしい仕掛けが施されているのも見どころの一つだ(さらには人情もふんだんに、哀切なラストの余韻もたまらない)。
青島幸男、藤岡琢也、森繁久彌の遺作となったことでも有名だが、快活に「あばよ!」と手を振られたような清々しい気分になる、正しく死に花の一作である。(理)