第34回映画祭TAMA CINEMA FORUM
永山公民館(多摩市公民館)
関戸公民館(多摩市公民館)
高校2年の冬休みに、付き合って100日を記念して旅行に出かけたテフンとミジョン。両親には嘘をつき、韓国の東海岸にある束草(ソクチョ)で二人きりの甘い時間を過ごす。家に戻ったテフンは両親から叱られ、ミジョンの親はテフンとテフンの両親を家に呼びつけ、「大学に入るまでは会わない」と誓約書を書かせる。ミジョンへの気持ちを抑えきれないテフンはなんとかミジョンと会おうとするが、ミジョンのほうはテフンを避けるようになっていき……。
バンクーバー国際映画祭“ドラゴン&タイガー・ヤング・シネマ賞”を受賞したチャン・ゴンジェ監督の長編デビュー作。製作費約1億ウォンという低予算で作り上げた本作は、監督が自身で編集まで直接携わったこだわりの塊ともいえる作品。撮影したソースをスクリーンに映写するまでの過程で生じるデータの損失を最大限に抑えようと、韓国内で開かれるデジタル映画のセミナーやワークショップのほとんどに参加して研究するなど、2年間にわたって準備したうえで撮影を開始。なぜ映画を撮るのかという質問に対するチャン・ゴンジェの答えであり、映画監督としてのスタート地点である。
『十八才』はメランコリーな青春映画で、大人への抵抗、鬱積した感情のやり場の無さ、ミジョンとのすれ違いをストーリーの流れをひねった回想構造で編集し、思春期の子供の心情が丁寧に描かれている。“青春の息苦しさ”を精巧に計算されたカットと編集のリズムによって絶えず余韻を投げかけてくる。(飯絢)
アンチョビの加工工場で働くヒョンスとヨガのインストラクターをしているジュヒは、結婚して2年になるカップル。まだ子供はなく、しばらくは自由を楽しみ、いつか授かればいいと思っている。それほど裕福ではなかったが、とても仲が良く、帰宅時は駅で落ち合い並んで自転車で帰る。休日は自宅でビールを飲みつつ、ぼんやりテレビを見る平穏で幸せな毎日を送っていた。ある晩、いつものように自宅で会話を楽しんでいた二人は、ふとしたことからケンカになってしまい……。
全州国際映画祭の韓国長編映画部門グランプリと観客賞をダブル受賞した長編2作目。
30代の夫婦が持つ現実の問題を誰もが共感できるテーマとして描き、ドラマティックな出来事ではなく、刺激的でもない素朴な日常を淡々と描きながら、監督独自の深い考察を通じて、二人の微妙な関係を詳細に描いた演出に魅了される。だからこそ、結婚という普遍的な生活のひとつのエピソードが国内外の観客の共感を得たのではないだろうか。
チャン・ゴンジェ監督が企画段階から実際の夫婦をキャスティングしようとしていたほど、何より主演俳優ふたりの相性が重要だったが、キム・スヒョンとキム・ジュリョンは、実際に夫婦ではないかと思われるほどの自然な演技を見せている。
『十八才』が監督自身が経験した10代の悩みだったとすると、2作目の『眠れぬ夜』は、変わらず自己反映的な映画を作り続けているチャン・ゴンジェ監督のパートナーとの生活が濃密に投影された作品だ。(飯絢)
1977年生まれ。 韓国映画アカデミー撮影専攻卒業。長編デビュー作『十八才』(2009年)でバンクーバー国際映画祭、ペサロ国際映画祭、ソウル独立映画祭などで受賞し、その後『眠れぬ夜』(12年)は全州国際映画祭大賞および観客賞、エジンバラ映画祭、ナント三大陸映画祭などで受賞。日本の奈良を舞台に撮影した日韓合作映画『ひと夏のファンタジア』(14年)は、釜山国際映画祭、ムジュ山里映画祭、韓国評論家協会賞、イタリア・アジアティカ映画祭などで受賞し、韓国独立映画協会の「今年の独立映画」に選ばれる。また、ムジュ山里映画祭プロジェクトである『月が沈む夜』(20年)の共同監督、TVINGオリジナル6部作TVシリーズ「怪異」(22年)を監督、濱口竜介監督の著書「カメラの前で演じること」(22年)の韓国語版出版も手がける。ほかに、映画『5時から7時までのジュヒ』(22年)、釜山国際映画祭開幕作に選ばれた『韓国が嫌いで』(23年)、アマチュア俳優たちの演技ワークショップを扱った映画『最初の記憶』(23年)など。今年10月11日〜13日にはソウル・アリランシネセンターにてチャン・ゴンジェが手がけた短編映画を含む全11編を上映する“チャン・ゴンジェ展”が開催された。
1987年生まれ。2004年にドラマ「悲しき恋歌」のミュージックビデオで芸能界デビュー。ドラマ「空くらい地くらい」「魔王」(いずれも07年)、『大王世宗』(08年)、『根の深い木』『あなただけよ』(いずれも11年)など代表作が多数あり、“多作俳優”と呼ばれる。映画界では“インディペンデント映画界のプリンス”と呼ばれ、映画情報番組の司会、映画祭開幕式の司会や広報大使なども数多く務め、16年発行の書籍「独立映画・私のスター」では韓国独立映画界を代表する俳優10人に選ばれた。09年 第35回ソウル独立映画祭 独立スター賞(『十八才』)、11年 第19回大韓民国文化演芸大賞 映画部門新人俳優賞(『BLEAK NIGHT 番人』)を受賞。17年4月に社会服務要員として軍に服務、19年に転役し、映画3作品に出演の後、23年に日本の朝ドラにあたるKBSの人気毎日ドラマ「蝶よ花よ」に主演、シングルファーザー役を演じて、“KBS演技大賞 連続ドラマ(男性俳優)部門優秀演技賞”を受賞。最新作は現在KNTVで放送中のドラマ「勇敢無双ヨン・スジュン」。23年11月には東京、24年3月には大阪でファンミーティングを開催し、これまでになかったファンとの対話形式ファンミで話題となり、今後も定期的に開催を予定している。