第34回映画祭TAMA CINEMA FORUM
永山公民館(多摩市公民館)
関戸公民館(多摩市公民館)
演出家を志すナナミは戯曲の執筆に励むため、なけなしの制作資金をはたいて小さな港町のゲストハウスを訪れる。長期滞在している大学院生のリョウと観光客のアリナ、そして若くて快活なオーナーであるアラシと距離を縮めていくナナミだったが、生活空間を共有する中で次第にそれぞれの行動に不信感を抱き始める。ナナミが当初予定していた滞在期間は7日間。しかし静かな漁村の風景とは裏腹に、若者たちは浮ついた気分に駆られてか、ますます自由奔放に振る舞うようになっていくのであった。
中高時代を過ごした神戸のような坂と海のある街で映画を撮りたいと思い千葉県銚子市に向かいました。よそ者の視点であることは自覚しながら、港町に固有の空間とそこに流れる時間を4人のカッコいい役者たちの言葉や動きとうまく交流させることはできないかという試みです。どうぞひと夏のバカンス映画をお楽しみください。
2000年生まれ、兵庫県出身。東京大学医学部医学科在籍中。免疫学研究に従事する傍ら、写真・映画・メディアアートといった映像領域で創作活動を展開。大学に入学してパンデミックが勃発し、その間に映画を浴びるようにして観たことが映画制作に傾倒するきっかけとなった。23年度にはENBUゼミナール監督コースに所属し『姿』を制作した。
弁当工場勤務の大田は、ある日不当な理由で解雇されてしまう。人事課長の中村と口論になった末、揉み合いに発展。大田は中村から暴力を受けたと訴え、警察に通報し、事情聴取のため警察署に向かうことに。大田は弁護士の聡を呼び出し、事件について相談するが、聡は終始冷ややかな態度で、事態は想定外の方向に……。
大田は残留孤児として日本に戻り、東北を「脱出」できたものの、失業の運命からは逃れられない。こうした運命は一体誰に相談すればよいのだろうか。この作品を通じて、人間疎外の問題によって本来あるべき家族の絆が消え失せ、金銭を介して成り立つ関係に変わってしまうという社会発展がもたらす負の影響を訴えたい。
1989年生まれ、中国大連出身。2014年から日本へ留学。日本文部科学省国費留学生。現在東京藝術大学大学院映像研究科に在学中。短編作品『ハーフタイム』は第25回上海国際映画祭、第7回平遥国際映画祭、第46回モスクワ国際映画祭、第45回ぴあフィルムフェスティバルなどに出品、第8回平遥国際映画祭にて最優秀短編賞を受賞。
同じ俳優である若葉と黒川は、ある映画のオーディションで偶然出会った。最初、彼らは脚本の元に結婚する予定の恋人を演じたが、その後、監督は2人に即興演出をお願いし、現実と演出が重なり、彼らは再会したカップルを演じることになった。
この作品は、映画の人物演出に関する考察や方法論の追究を、映画表現そのもので構造的に体現していく試み。映画のキャストのオーディション会場が舞台。男女の別れを予感させる一幕。一組の男女が脚本を演技的に読み合わせ、次の組では女優の不在により監督がト書きを読み男優とスタッフ女性が同じ脚本を読み合わす。そこに遅刻した女優が現れ動揺する男優とやや緊張感のある読み合わせへ……新要因が加わることで次第に芝居は迫真のものに昇華していく。
1998年生まれ、中国出生。武蔵野美術大学に入学後、写真、メディアアート、映画制作を学び、本作は第35回東京学生映画祭、PFFアワード2024、なら国際映画祭にも選出された。現在、同大 大学院の修士課程に在籍。
仁美と洋の夫婦が住むマンションに、ジオラマ作家の女性・小夜子が引っ越してくる。やがて、小夜子は洋の元恋人であることが判明し、2人は惹かれあっていく。一方、夫婦の視線は交わらなくなっていく。管理人室の小さな窓から、3人の関係を見つめる管理人の好奇の目。遠くに見える、街・車・人。あそこで何が起きているのだろう。
夜に浮かぶ無数の窓の明かりを遠くから眺めた時、中では一体何が起こっているんだろうかという興味から映画がはじまりました。一見シンプルなストーリーですが、この映画に訪れる真の危機とは、夫婦の関係だけではないもっと超越したところにあります。
1998年、愛知生まれ。東京造形大学映画専攻、東京藝術大学大学院映像研究科監督領域に進学。黒沢清監督、諏訪敦彦監督に師事する。『逃避行』(2022年)がサンセバスチャン国際映画祭NEST部門などの映画祭に選出される。