第35回映画祭TAMA CINEMA FORUM
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1980年代後半。11歳の少女フキ(鈴木)は、両親と3人で郊外の家に暮らしている。豊かな感受性を持つ彼女は、想像力を膨らませながら、大人の世界を覗(のぞ)いてみたりしながら自由に過ごしていた。しかし、闘病中の父(リリー)と、仕事に追われる母(石田)の間にはいつしか大きな溝が生まれ、フキの日常も否応なしに揺らいでいく。
早川千絵監督は、主人公と自分はイコールではないと言及しながらも、極めてパーソナルな作品を作りあげた。
舞台は80年代。病を患う父の面倒をみながら働く母親は手いっぱい。学校、病院、家を行き来する好奇心旺盛な11歳の主人公フキは、自ら社会に触れていく。
登場する大人たちは、みんな寂しさに絡め取られているように見える。昭和、平成、令和、あるいは〇〇世代というように、時代の流れと変化について語られる機会は多いが、いつの世も人間の本質は変わらない。ひとの奥底にある揺らぎを淡々と捉えたその視点は、2025年現在の社会の空気をも映し出している。
心のままに行動するフキはあまりに無防備だ。しかし“社会のカタチ”を確かめるようにいろいろなものに触れ、哀しみと寂しさを知ってなおフキがみせる笑顔は、彼女と同じ年頃だったあの頃の私を抱きしめ、心もとない社会のなかでいまだに迷い続ける現在の私の背中を押してくれたように思えてならない。(ながせ)
任侠一家に生まれた喜久雄(少年期:黒川、青年期以降:吉沢)。15歳の時に抗争で父を亡くした彼は、その才能を見抜いた歌舞伎の名門の当主の花井半二郎に引き取られる。半二郎の跡取り息子である俊介(少年期:越山、青年期以降:横浜)と兄弟のように育てられ、ライバルとして互いに高め合いながら芸に青春を捧げていく喜久雄。ある日、半二郎は事故で入院することとなり、舞台の代役に息子の俊介ではなく喜久雄を指名する。
毎週発表される興行収入のニュースに、これほど心躍った年はありません。あの数字は単なる記録ではなく、どれだけ多くの人が心を動かされ映画館へ足を運んだかという熱狂の証でした。
「『国宝』観た?」この一年、どれほど多くの場所でこんな会話が交わされたことでしょう。普段は映画の話をしない友人知人が目を輝かせて役者の凄(すご)みを語り、物語の解釈で盛り上がる。
私たちの日常に、映画を語り合う豊かで幸せな時間が確かに増えた一年でした。映画祭の一スタッフである私にとって、それは何より嬉しい光景です。
一本の映画が人と人とを繋ぎ、「映画館で観る」という体験そのものに、再び強い光を当ててくれた。名実ともに日本映画の歴史を塗り替えた『国宝』が生み出したこの大きなうねりを、近い将来また違う形で目撃できることを願ってやみません。(遠)
1974年生まれ。大学卒業後、日本映画学校に入学し、映画を学ぶ。99年に卒業制作として監督した『青 chong』が、PFFアワード2020でグランプリ他4部門を独占受賞してデビュー。以降、2006年『フラガール』では、第30回日本アカデミー賞最優秀作品賞、最優秀監賞、最優秀脚本賞を受賞。初めて吉田修一作品に挑んだ『悪人』(10年)は、第34回日本アカデミー賞13部門15賞受賞、最優秀賞主要5部門を受賞し、第35回報知映画賞作品賞、第84回キネマ旬報日本映画ベストテン第一位、第65回毎日映画コンクール日本映画大賞など国内のあらゆる映画賞を総なめにし、第34回モントリオール世界映画祭ワールド・コンペティション部門で最優秀女優賞を受賞するなど、海外でも高い評価を得る。更には『許されざる者』(13年)、『怒り』(16年)、『流浪の月』(22年)など。
NYの美術大学School of Visual Artsで写真を専攻し独学で映像作品を制作。短編『ナイアガラ』が2014年第67回カンヌ国際映画祭シネフォンダシオン部門入選、ぴあフィルムフェスティバル グランプリ受賞。2018年、是枝裕和監督総合監修のオムニバス映画『十年 Ten Years Japan』の一編の監督・脚本を手がける。その短編から物語を再構築した初の長編映画『PLAN 75』(22年)で、第75回カンヌ国際映画祭カメラドール(新人監督)特別表彰を受け、『ルノワール』は第78回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に選出された。
1977年生まれ、三重県出身。スクリプターとして映画制作に携わり、初長編脚本『酒井家のしあわせ』でサンダンス・NHK国際映像作家賞受賞、2006年同作で映画監督デビュー。『オカンの嫁入り』(10年)で新藤兼人賞金賞受賞、『そこのみにて光輝く』(14年)でモントリオール世界映画祭ワールドコンぺティション部門最優秀監督賞受賞、『きみはいい子』(15年)でモスクワ国際映画祭にて最優秀アジア映画賞および第7回TAMA映画賞最優秀作品賞受賞。2児出産を経て9年ぶりの監督作『ぼくが生きてる、ふたつの世界』(24年)は第26回上海国際映画祭コンペティション部門選出および第16回TAMA映画賞特別賞を受賞。
横浜市出身。明治大学政治経済学部卒業後、1997年に映画美学校第1期生となり、『恋するマドリ』(2007年)で商業映画監督デビュー。以降、『でーれーガールズ』(15年)、『甘いお酒でうがい』(20年)など。『勝手にふるえてろ』(17年)で、第30回東京国際映画祭コンペティション部門観客賞、第27回日本映画プロフェッショナル大賞作品賞を受賞。『私をくいとめて』(20年)が、第33回東京国際映画祭TOKYOプレミア2020にて史上初2度目の観客賞、第30回日本映画批評家大賞監督賞を受賞。
1945年生まれ、東京都出身。早稲田大学演劇科在学中に有志と劇団を結成。68年に中退してフランス留学。74年フランス映画『パリの中国人』で映画デビュー。帰国後はTVドラマや映画、CMで活躍。『宇宙の法則』(90年)、『ザ・中学教師』(92年)、『瀬戸内ムーンライト・セレナーデ』(97年)などで数々の映画賞を受賞し、『敵』では東京国際映画祭最優秀男優賞を受賞。(2024年)他に代表作として『東京夜曲』(97年)、『笑う蛙(かえる)』(2002年)などがある。
1994年生まれ、東京都出身。2009年にデビュー。18年『リバーズ・エッジ』などで第10回TAMA映画賞最優秀新進男優賞を受賞。翌19年『キングダム』で第62回ブルーリボン賞助演男優賞、第43回⽇本アカデミー賞最優秀助演男優賞などを受賞。24年『ぼくが生きてる、ふたつの世界』で第16回TAMA映画賞最優秀男優賞、第34回日本映画批評家大賞主演男優賞を受賞。本年度は2年連続の受賞となる。主な出演作に大河ドラマ「青天を衝け」(NHK/21年)、『キングダム』シリーズなど。連続テレビ小説「ばけばけ」(NHK)に出演中。
1989年生まれ、富山県出身。内田英治監督『グレイトフルデッド』(2014年)で映画初主演。『火口のふたり』(19年)で、第41回ヨコハマ映画祭最優秀新人賞・第93回キネマ旬報ベスト・テン主演女優賞、『由宇子の天秤』(21年)で、第31回日本映画批評家大賞主演女優賞・第31回日本映画プロフェッショナル大賞主演女優賞など、国内外で多くの賞を受賞。25年は『レイブンズ』のほかに『敵』『奇麗な、悪』『ゆきてかへらぬ』『国宝』『ふつうの子ども』『宝島』が公開された。
1998年生まれ、静岡県出身。TVドラマ「幽(かす)かな彼女」で女優としての活動を開始し、『海街diary』(2015年)で数多くの新人賞を受賞。翌年『ちはやふる』(16年)で映画単独初主演。19年には、NHK連続テレビ小説「なつぞら」でヒロインを務める。近作に、第14回TAMA映画賞最優秀女優賞、日本アカデミー賞優秀主演女優賞を受賞した『流浪の月』(22年)のほか、『キリエのうた』(23年)、『ゆきてかへらぬ』『片思い世界』『宝島』(いずれも25年)など。26年に『汝、星のごとく』の公開が控えている。
1989年生まれ、沖縄県出身。大学在学中に、沖縄県を拠点に活動する映画制作チーム「PROJECT9」を立ち上げ、多くの自主映画を制作。初長編作品である『アンボイナじゃ殺せない』(2014年)では、第15回TAMA NEW WAVE ある視点に入選。以降、3分以内の予告編を対象とする映像アワード「未完成映画予告編大賞(MI-CAN)」では、グランプリに輝き、劇場公開作品『ミラクルシティコザ』(22年)は、第41回ハワイ国際映画祭 Spotlight on Japan部門に出品。本年はほかに堤幸彦監督との共同監督作品『STEP OUT にーにーのニライカナイ』(25年)がある。
1993年生まれ、大阪府出身。大阪芸術大学映像学科の卒業制作『ゴロン、バタン、キュー』がPFFアワード2015や東京学生映画祭、京都国際学生映画祭で多数受賞。文化庁「ndjc2018:若手映画監督育成プロジェクト」では短編映画『うちうちの面達(つらたち)は。』を監督した。このほか、ショートフィルム『ワンナイトのあとに』(19年)がYouTubeで300万回再生され、BUMP配信ドラマ「今日も浮(うわ)つく、あなたは燃える。」の切り抜きなどがSNSで総再生回数4億回を超える。『この夏の星を見る』(25年)は商業長編デビュー作にあたる。
1999年生まれ、埼玉県出身。ドラマ「美しい彼」(2021年)で注目を浴び、以降、映画・ドラマに多数出演。近年の主な出演作に『劇場版 美しい彼~eternal~』、『おとななじみ』、『ミステリと言う勿(なか)れ』(いずれも23年)、『朽ちないサクラ』、『キングダム 大将軍の帰還』(いずれも24年)、『世界征服やめた』(25年)などがある。声の出演を務める『花緑青が明ける日に』の公開が26年に控えている。
2009年生まれ、埼玉県出身。NTV シンドラ「トーキョーエイリアンブラザーズ」(18年)で俳優デビュー。『怪物』(23年)で映画初出演を務め、第66回ブルーリボン賞新人賞、第47回⽇本アカデミー賞新人俳優賞などを受賞。主な出演作に『BISHU ~世界でいちばん優しい服~』『【推しの子】-The Final Act-』(いずれも24年)、『国宝』『この夏の星を見る』『アフター・ザ・クエイク』(いずれも25年)などがある。
2002年生まれ、千葉県出身。幼少期から芸能活動をスタートさせ、18年『咲-Saki-阿知賀編 episode of side-A』で初主演。『交換ウソ日記』(23年)で第47回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。近年の主な出演作にドラマ「silent」(22年)、「あの子の子ども」(24年)、「相続探偵」「ESCAPE それは誘拐のはずだった」(いずれも25年)、映画『バジーノイズ』『ブルーピリオド』(いずれも24年)、『大きな玉ねぎの下で』 (25年)、公開待機作に『モブ子の恋』(26年初夏公開予定)などがある。
2005年生まれ、東京都出身。モデル、女優。モデルとして、広告や雑誌などで活動中。女優として、第76回カンヌ国際映画祭コンペティション部門正式出品『PERFECT DAYS』(23年、監督:ヴィム・ヴェンダース)に出演し、おおさかシネマフェスティバル新人女優賞を受賞。24年にオリジナル配信作品「まだゆめをみていたい」、25年にTVドラマ「僕達はまだその星の校則を知らない」に出演。26年春に日本・フィリピン合作『この場所』の公開が控えている。