第35回映画祭TAMA CINEMA FORUM
毎日に漠然とした不安を抱え、何事にも本音が言えずにいる29歳の小学校教師・雪子(山下)。好きなラップをしている時だけは本音を言えていると思っていたが、思いがけず参加したラップバトルでそれさえも否定され、立ち尽くしてしまう。どんな人間になりたいのかと自問自答を重ねながら、30歳の誕生日を迎えた雪子だが……。
「これは自分のために作られた映画だ!」と心の底から思える一本に、あなたは出会ったことがありますか? 素晴らしい映画は数あれど、そう思えるかどうかは、いつどんな自分で出会うかのタイミングがすべてだと個人的に思います。私にとって『雪子a.k.a.』との出会いはまさに宝物のような偶然でした。仕事、恋愛、自己表現、何事においても本音を言えずに漠然とした不安を抱える雪子の姿はまさに私の心の写し鏡であり、あなたの心にもきっとどこか重なる部分があるのではないでしょうか。本作で描かれるのはラッパーとしての成功譚(たん)ではありません。不安を無理に消し去るのではなく「不安なままでも生きていける」とただ静かに寄り添ってくれる、誠実で優しいエールを受け取ったとき、あなたの胸にはきっと小さな風が吹くはず。映画との出会いはコントロールできない奇跡。願わくば、『雪子a.k.a.』が誰かにとって忘れられない一本となりますように。(遠)
1992年生まれ、徳島県出身。2007年「三井のリハウス」12代目リハウスガールに選ばれ、注目を集める。同年にドラマ「恋する日曜日第3シリーズ」で本格的に俳優デビュー。08年『魔法遣いに大切なこと』で映画初主演。近年の出演作に、NHK連続テレビ小説「あまちゃん」(13年)、配信ドラマ「ガンニバルseason1/2」(Disney+)、濱口竜介監督作『寝ても覚めても』(18年)、岨手由貴子監督作『あのこは貴族』(21年)、古厩智之監督作『PLAY!〜勝つとか負けるとかは、どーでもよくて〜』(24年)などがある。
1998年生まれ、東京都出身。2011年より乃木坂46メンバーとしてグループ活動だけでなく、主演舞台「フラガール」や、ドラマ「教場Ⅱ」などにも出演。22年にグループを卒業後は、連ドラ初主演となった「初恋不倫」や、「トーキョーカモフラージュアワー」「できても、できなくても」など多数のドラマや、劇団☆新感線「紅鬼物語」、赤堀雅秋プロデュース「ボイラーマン」などの舞台に出演し話題に。本作が映画初出演となる。