第35回映画祭TAMA CINEMA FORUM
長編映画『ソワレ』『茶飲友達』のヒットでも知られる外山文治監督は、海外でも多く注目されている。今回上映させていただく作品以外もそうなのだが、短編であってもどの作品も画がしっかりしているのでより大きなスクリーンで観て欲しいのが外山監督の作品。それでいて画に圧倒されるとかではなく、しみじみと作品に没入させてくれ、それが観た後にも長く余韻が残る。短編だからこその凝縮した外山監督の作品を是非観ていただきたい。(Ao)
長年にわたる妻(百元)の介護で自身も健康を損ね、妻よりも余命が長くないことを悟った夫(遠山)。自分の死後、妻はどうなるのかと不安に駆られるが頼るあてもなく、周囲との交流も貯金もない夫は行き場を失い、次第に生きる意欲を失っていく。そして、以前、森の湖畔で撮影した写真に写る自分たちの姿を見た夫は、妻を連れて再びその場所に向かう。
心の病を抱えた父を守るため実家の寿司屋「やま乃」を継ごうと決めた女子高生・山野葵(芳根)。離れて暮らす母・房子や周囲の大人たちは、その決断に戸惑い反対しながらも、彼女の人生を本気で背負おうとはしない。そんな葵の前にかつて所属していた少年野球チームの監督・梅田庄吉(下條)が現れた。粉雪が舞う静かな夜、葵は庄吉に野球の勝負を求める。葵が噛(か)みしめる、人生の苦しみと哀(かな)しみ、そして新しい希望。
櫻の花が咲く季節、ひとりの女性(吉行)が警察に保護された。身元不明のその女性には、どうしても行きたい場所があるという。「ソメイヨシノは60年咲くことができない―?」そんな噂の真偽を確かめるべく、既に廃校となったかつての学び舎へと向かう。ひょんなことから彼女を案内することになってしまった青年・幹夫(村上)と共に……。風に舞う櫻の花びらと、揺れる想い。春の日に永遠とは何かを問う、ささやかなものがたり。
中学のクラスメイトの春(星乃)と麗(河村)は趣味も顔もそっくりの似たもの同⼠。ある⽇の放課後、体育館でTikTokの撮影をしていた彼⼥たちは、SNSで春の⽗親の姿を⾒つける。⼦供の頃に離婚して家を出て⾏った⽗は、⼩さいカフェを営んでいた。春は麗と⼀緒に⽗に会いに⾏くことを決める。春の想いと⽗の記憶とが交錯する10年ぶりの再会は、果たして。
東京の夜の街⾓でガールズバーの呼び込みをするミカ(内海)、エリ(イトウ)、ハル(宇野)の3⼈。ミカは常連客の君島がインターネットカフェで、遺体で⾒つかったことを告げる。彼のズボンのポケットには「死んだら呼んでほしい⼈」のメモが残されてあり、そこに3⼈の名前が記載されてあったと⾔うのだ。翌⽇、無縁仏となった君島のために⽕葬場へと向かう。そして彼⼥たちは都会の孤独な現実を突きつけられるのだった。
妻であり一児の母でもある沙穂(田中)は、同じく妻子持ちの涼太(遠藤)と恋人関係にある。涼太に惹(ひ)かれる沙穂は、この関係をいつまでも続けてはいけないという冷静さも持ち合わせていた。ある日、沙穂は涼太に「1日だけ夫婦になろう」と伝える。そして、それをもって関係を終えることを告げた。約束の日、ふたりは「ユウスケくんのパパ」「ヒナタちゃんのママ」であることを忘れて見知らぬ街で夫婦として過ごした。
1980年⽣まれ、福岡県出⾝。短編映画『此の岸のこと』が「モナコ国際映画祭2011」で短編部⾨・最優秀作品賞をはじめ5冠。⻑編映画デビュー。『燦燦ーさんさんー』が「モントリオール世界映画祭2014」正式招待。2017年、「映画監督外⼭⽂治短編作品集」を発表。ユーロスペース観客動員数歴代1位を樹⽴。20年、⻑編映画『ソワレ』公開、釡⼭国際映画祭「アジアの窓」部⾨正式招待。23年、⻑編映画『茶飲友達』公開、第48回報知映画賞「作品賞」「監督賞」にノミネートされ、フランスのパリで開催される「KINOTAYO現代⽇本映画祭」にてグランプリを獲得、第37回⾼崎映画祭にて「最優秀監督賞」「最優秀主演俳優賞」を受賞。