第35回映画祭TAMA CINEMA FORUM
「私たち、ずっとこの身体で生きてきたもんね」
大学生の百瀬波留は、外側へと接する目に見える肉体と、そのなかに閉じ込められた見えない自分自身との狭間でゆらぎ、がんじがらめになりながら生きていた。ある日、偶然拾った糸をなんとなく手放せずに弄んでいた百瀬は、ひとり編み物をしている女性、月本織に出会う。月本と共に糸を編むことを通じて、百瀬はその手で自分自身と世界とを編みなおし、絡まり、ほどけ、結ばれてゆく。
ひとは常になにかに触れながら生きている。
わたしは「さわる」という行為の怖さが好きだし、「ふれる」ことの重さはもっと好き。見えるものの狭間にある、見えそうで見えないなにかに触れかけたときの逡巡(しゅんじゅん)や温度を感じていただければ幸いです。
2002年生まれ、東京都出身。いて座。早稲田大学文学部在学中。大学では「ぬいぐるみ同好会」というサークルを作り、もふもふする気持ちを分かち合った。くらげと搾菜(ザーサイ)とお粥(かゆ)が好きなので、中華料理屋さんに行くと嬉しい。
仕事で失敗し絶望した男がある日とても魅力的なゴミ箱のパンダに出会う。街に捨ててあるゴミを拾いながらそのパンダと緩くホームレス生活を送っているが、ある朝パンダが失踪してしまう。街を駆け巡り探し続けた先で男はとんでもない光景を目の当たりにする。男が解釈し受け取った想いと、ゴミ箱パンダの真の目的と想いが、スレ違いながらも前向きに進もうとするミスコミュニケーション映画。
ゴミなんだけれどゴミじゃない、意味無いんだけれど意味がある。そんな映画です。
今作は造形が魅力的なパンダをメインに「ゴミなんだけれどゴミじゃない、意味無いんだけれど意味がある」をテーマに映画を撮りたいという、そのチグハグな目的と想いがそのまま表れた変なバランスの映画になってます。そこが好きです。現実でのすれ違いに疲れた時、このパンダを見て少しでも元気になってくれたら本望です。
1998年生まれ、東京都出身。大学の課題で初挑戦したストップモーションが上手くいったことから、映画制作に着手。2022年ぴあフィルムフェスティバルPFFアワードで友達の髙橋と共に製作した『スケアリーフレンド』が準グランプリ&観客賞を受賞。次に製作した『fataL/ファータル』が第3回日本ホラー映画大賞でニューホープ賞を受賞。
義久は、娘の唯と暮らしている。唯は31歳になっても未だ反抗期のような冷たい態度で義久に接しており、家族仲はあまりよくない。ある日、義久は職場で失態を犯しクビになってしまい、唯に秘密を打ち明ける。普段は俳優として活動する菅原雪が、自分で映画を制作するなら予算の多くを俳優への報酬に充てたいという強い想いから、スタッフを自ら担当。撮影現場では菅原が主演しながら同時に監督・撮影・録音も行ったという異色の映画。
私自身が親に対して冷たい態度をとってきて、親が亡くなってしまった今、その態度をとても後悔しています。大切な人に対して素直になれない人に、私と同じような後悔をしてほしくないと思い、この映画が「素直になってみようかな」と思えるきっかけになれたら嬉しいです。
1988年生まれ、東京都出身。高校卒業後から俳優を始め、2021年に劇団アンパサンドの劇団員となる。近年は出演だけに留まらず、自主映画の撮影・編集・録音・整音なども行っている。これからはバリアフリー日本語字幕とバリアフリー日本語音声ガイドの制作にも携わりたいと考えている。出演作品は映画『よく晴れた日のこと』(伊藤智之監督)、『愛の茶番』(江本純子監督)など。製作も兼任した『話したりない夜の果て Days gone by』(上村奈帆監督)が11/15〜公開予定。
俳優の田中揚羽は、突如、マルチバースを巡る旅に巻き込まれる。映画監督を夢見る金井と、好奇心を原動力に旅する宇宙人K。二人との奇妙な旅路のなかで、揚羽は亡き親友・グリコとの日々を回想する。記憶と過去、そしてフィクションが入り混じる“映画”のなかで、揚羽は再びグリコに出会う。
高校生の時に感じていた都会への憧れとフラストレーション、映画を作りたいという青い思い、友人との死別。頭の奥に押し込んでいたすべてを、まんま映画にしました。映画です! 楽しく観てください!
1998年生まれ、岡山県出身。早稲田大学文化構想学部卒業。劇団ヅッカ代表。脚本・演出を手がけた演劇作品「陽光」(2024年10月上演)が佐藤佐吉賞2024にて最優秀作品賞を受賞。本作が映画監督デビュー作となる。