第35回映画祭TAMA CINEMA FORUM
とある地方都市の高校。文化祭を目前にしたある日、軽音楽部の5人組ガールズバンドは、ギタリストが怪我により離脱、内輪揉めによってボーカルが脱退。残された3人のメンバーは成り行きから韓国人留学生ソン(ペ・ドゥナ)を新しいボーカルとして迎え、ザ・ブルーハーツのコピーバンドを結成して文化祭最終日の本番に向けて練習を重ねるが……。
どこにでもありそうな、だけどここにしかない、唯一無二の青春映画『リンダ リンダ リンダ』がスクリーンに帰ってきたことは、この夏の最高の驚きと興奮だった。
20年ぶりに劇場で観た映画は、変わらずにそこで青春していて、恵(香椎)たちが過ごす学校の廊下や教室、軽音学部の部室に貼られたフライヤーやポスターのひとつひとつが、自分もそこにいたのではと錯覚するかのよう。一瞬で“あの頃”に戻り、気持ちは制服を着たまま、彼女たちと一緒に3日間のドタバタを駆け抜けた。
友達とのすれ違い、なんでもないやりとり。無謀にも思える挑戦やちょっとしたときめき。青春のわくわくした気持ちの高まりとほんの少しの苦さ。そんな空気感をこの作品ほどの精度でぎゅっと閉じ込めた映画を、私はほかに知らない。
観れば、いつでも、いつまでも「パーランマウム=蒼い心」に戻れる。20年を経てもなおそこでただ輝き続ける瞬間の“どぶねずみみたいな美しさ”を再確認して、「終わらない歌」が心のなかに鳴り続けている。(ながせ)