第35回映画祭TAMA CINEMA FORUM

プログラム紹介

【D-7】70年代~90年代の青春映画 ―Vol.2―

11/11[火] ベルブホール
チケット情報
  • 一般
     
    当日のみ 800円 
  • 子ども(4歳~小学生)
     
    無料 
  • 支援会員特別料金
    ― 
  • 障がい者特別料金
    ― 
会場アクセス

ベルブホール

〒206-0025 東京都多摩市永山1-5
小田急多摩線/京王相模原線「永山駅」より徒歩2分。ベルブ永山5階

伊豆の踊子

  • 1974年/東宝、ホリプロ製作/東宝配給/82分
  • 原作=川端康成
  • 監督=西河克己
  • 脚本=若杉光夫
  • 撮影=萩原憲治
  • 美術=佐谷晃能
  • 音楽=高田弘
  • 出演=山口百恵、三浦友和、中山仁、佐藤友美、石川さゆり、宇野重吉(ナレーター)

コメント

川端康成の人気小説の6度目の映画化。1作目は昭和8年、売り出し中の田中絹代主演で制作された(無声映画)。以後、美空ひばり、鰐淵晴子、吉永小百合、内藤洋子、そして山口百恵が踊子役を演じてスターへと羽ばたいた。個人的には、初代の田中絹代が初々しく清らかな魅力を放っていたと思う。

この6作目では、職業差別や貧困、病、死など負の描写が物語のなかに忍び込んでくる。時代の変化もあるが、山口百恵という、従来のアイドルとは異なる個性を持つスターを育て上げようとの意図があったのかもしれない。

いっぽう一高生を演じたのは、大日方伝、石浜朗、津川雅彦、高橋英樹、黒沢年男、三浦友和の6人。このうち石浜朗は、川端康成の若き日の憂鬱(ゆううつ)を感じさせて魅力的だった。

ちなみに、山口百恵の相手役はオーディションで選出されたが、最終選考に残ったのは2人で、1人は三浦友和、もう1人は演技経験のない現役東大生だったという。この東大生は、本作にワンカットだけアップで映ります。(三)

櫻の園

  • 1990年/NCP、サントリー製作/アルゴプロジェクト配給/96分
  • 監督=中原俊
  • 原作=吉田秋生
  • 脚本=じんのひろあき
  • 撮影=藤沢順一
  • 美術=稲垣尚夫、内田哲也
  • 選曲=石井ますみ
  • 出演=中島ひろ子、つみきみほ、白島靖代、宮澤美保、梶原阿貴、岡本舞、南原宏治

コメント

もし「少女学園映画」というジャンルがあってオールタイムベストテンが選ばれたら、本作は間違いなく選出されるだろう(もちろん上位に)。

魅力の1つは中原俊監督の空間造形で、天井から見おろすカットで始まり、以後カメラは自在に動き回り、パンをし、しかし安易にズームに頼らない。少女二人が写真を撮る場面ではカメラは横移動して、屋内にもう一人の少女が隠れていることを観客に教える。そればかりではない。少女二人は、自分からカメラに寄ってきてくれるのだ。

中原監督が7年後に撮った『Lie lie Lie』で、詐欺師の豊川悦司が「人の心は無花果(いちじく)か巾着のようだ」と語る場面がある。このときトヨエツは両手を合わせ「こうして少しだけ心の口を開くんだ」と指先を優しく開いてみせる。

『櫻の園』の少女たちも、芝居の開演を控えて心の無花果(あるいは巾着)が少し開いた。模範生も不良少女も詐欺師も、こうして生きる喜びを発見していく。少女たちだけではない。私たち観客の心も96分の間、ふんわりと開かれていた。(三)