第35回映画祭TAMA CINEMA FORUM
行動的で調子のよい南条宏(郷)と内向的で真面目な野呂文平(川口)は、なぜかウマが合う。そんな二人が戸田京子(秋吉)に一目ぼれする。宏は、野呂の京子への思いの強さに自分は身を引こうと考え、京子は野呂の愛を受け入れて同棲生活に入る。しかし宏は、今さらながら自分も京子を愛していると自覚して……。
1977年4月、大学生になった私は古い木造建物の一室に出向いた。そこは映画研究会の部室で、たばこの煙で奥が見えないほどだった。入部希望を告げて椅子に座ると、隣の学生が自分も新入部員であると言い、互いに自己紹介をした。
彼とは経歴に共通点が多く、例えば彼も私も同じ日(1976年11月21日)の同じ時間に、銀座並木座で森谷司郎監督の『赤頭巾ちゃん気をつけて』を観ていたことも判明した。彼は秋吉久美子の大ファンで、話は当然『さらば夏の光よ』につながる。私が「あの映画はよかった。特にラストの……」と言いかけ、二人同時に「真っ赤な〇〇!」と言い合って、笑った。(〇〇はネタバレ防止です)
あれから50年近くが過ぎた。彼とは今でも年に数回は顔を合わせる。先日は暑気払いのビールを飲みながら、高橋伴明監督の『「桐島です」』がいかに素晴らしかったかを語り合った。(三)